勝手気ままにクラシック
2003年6月1日


映画「戦場のピアニスト」

 「戦場のピアニスト」という映画を見た。(2002年。ロマン・ポランスキー監督。)ウワディスワフ・シュピルマンというポーランドの実在のピアニストのお話。第2次世界大戦のポーランド。ユダヤ人である彼は、ナチス・ドイツからの激しい迫害を受ける。家族とともに強制収容所行きの貨車に乗るところを、ピアニストであるがために免れる。しかし、戦争は長かった。ユダヤ労働者として働くものの、ユダヤ人居住区から逃走して密かに生き延びた。戦争は終わり、彼はピアニストとして生き続けた。彼が死んだのは2000年というから、つい最近である。
 戦争とは、つくづく、何と非情なものだろう。ナチス・ドイツ軍のあまりにも残虐な侵略、殺戮行為には目を覆いたくなる。人はここまで残酷冷酷になれるものなのだろうか。第2次世界大戦では、世界中がそんな状況だったのかと思うとぞっとするのである。あんな自虐的な時代から人類はよく立ち直ったものだと思う。いまだって世界中で内戦・紛争は絶えることがない。しかし、あのときに比べれば、いまは幾分ましな時代であることは確かだろう。ましてや、いまの平和な日本からあの過去を想像するのは不可能と言っていいだろう。
 生まれた時代、場所によって同じ人間でも、運命が大きく変わってしまう。何と不条理なことだろう。
 
 よい映画だった。こんなに心に残る映画は久しぶりに見た。今年春に公開され、評判も良いようで気にはなっていたが、行くのが遅くなった。もう上映されている劇場はほとんどないが、何とか新宿文化シネマで見ることができた。ピアニストを扱った映画だから見に行ったのも確かだが、この映画の主題は、彼を奇跡のヒーローとして扱うことではなかった。もし、彼が映画の中でピアノを弾かなかったとしてもストーリーは成り立っただろう。実際、彼がピアノを弾くシーンはあまり多くない。もしこの映画に副題を付けるとすれば、「あるピアニストから見たユダヤの迫害」とでもなろうか。主題はピアニストではない。戦争である。
 2時間半もかかる長編だが、時間が経つのを忘れた。実に重量感のある、質の濃い作品である。残虐なシーンも多いので、小さい子供に見せるのは避けたほうがいいが、あれが脚色のない戦争の事実であろう。戦争を知らない我々はその事実を知る義務がある。ポランスキー監督の真面目で真摯な作品作りには感銘を受けた。シュピルマン役のエイドリアン・ブロディも雰囲気のある顔をしている。ピアニストははまり所であろう。
 テーマ曲であるショパンの「夜想曲第20番」嬰ハ短調(遺作)が耳から離れない。悲しく、切なく、胸が痛くなる名品である。


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