最近行ったコンサート
2000年3月
- 3月9日(木)スタジオ・ルンデ(名古屋市中区)
ルンデの会例会
ピアノ:伊藤恵
J.S.バッハ(ブゾーニ編)/コラール前奏曲“主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる”BWV639
J.S.バッハ(ヘス編)/コラール“主よ、人の望みの喜びよ”BWV147
J.S.バッハ/パルティータ第4番ニ長調BWV828
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第30番ホ長調Op.109
シューマン/交響的練習曲Op.13
運良く、先月に続いてまたルンデに来るチャンスが来ました。しかも伊藤恵さん!2ヶ月前のジルベスターコンサートでお目にかかっているとはいえ、本格的なリサイタルは初めて。いまやすっかりNHK-FMの人気番組となった「おしゃべりクラシック」の2代目司会者としての恵さんはよく知っていますが、肝心の演奏はあまりちゃんと聴いたことがありませんでした。(すいませ〜ん!)
さて、いよいよ恵さんが登場。前から2列目に座ったのでほんとにすぐそば。1曲目がいきなりバッハのコラール前奏曲“主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる”。僕にとってこの曲はバッハの中で一番大切な曲。恵さんは、あまり粘らず明快でクリアなタッチで弾かれました。2曲目の“主よ、人の望みの喜びよ”も同様でした。続いて、パルティータ第4番。こんな複雑で、しかし整然とした音楽を聴くと、音楽の理論というものは250年以上も前にこのバッハによりすでに完成されていたのではないかという気がします。バッハ以後の音楽はおまけみたいなもの、と言ったら言い過ぎか?恵さんの演奏は、チェンバロを意識したようなくっきりした印象でした。
そしてベートーヴェン。バッハとは当然違う音楽なのですが、私には、聴き始めそれほど明快な違いがあるように感じられませんでした。それは、この曲がどこか哲学的な雰囲気を持っているからか、あるいは恵さんの弾き方がバッハ的だったからかもしれません。でも、第2楽章を聴くと、ベートーヴェンの音楽には演奏者のプライベートな感情を持ちこめる余地があると思いました。バッハの音楽は、神そのもので、そこに個人的感情を差し挟む余裕はほとんどないでしょう。
コーヒーブレイク後、いよいよお得意のシューマン。まさに今月発売の、9枚目のシューマン・アルバムにこの交響的練習曲が収録されており、タイムリーなプログラムです。やっぱり、恵さんにとってシューマンは特別なんだ!ということをひしひしと実感させる演奏でした。わたしは、シューマンのピアノ曲はあまり親しみがなく、せいぜい子供の情景ぐらいしか知らないので、退屈しないか不安でしたが、そんな心配は無用でした。多彩な表現と技巧を使った力作です。そして恵さんの気合の入り方!高音の美しさは絶品でした。最後はすっかり作品と一体となって、人間シューマンが乗り移ったかのようでした。「そうか、これが伊藤恵のシューマンか。」と納得しました。プログラムの前半では恵さんの正体があまり見えてこないのでやや「?」という状態でしたが、最後のシューマンでよく分かりました。会場からも「う〜ん」という納得の声が出ていました。
拍手の後のお話。やっぱり恵さんは楽しい方です。アンコールは、かつてこの会場で演奏をし、恵さんも教えを受けたというタチアナ・ニコライエワさんが得意としたバッハということで、プログラム1曲目の“主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる”を再び。わずか3分ほどの曲ですが、ここには人間の喜び、悲しみ、あらゆる感情が含まれています。この曲1曲を弾くためだけにピアニストになってもいいとさえ私は思います。
終演後、ロビーでサイン会。私もやや緊張しながらあらかじめ買っていった色紙にサインしていただきました(これだ〜!)。いやぁ、恵さんのサインがいただけるなんて夢のようです。そして最後は恵さんを囲んで記念撮影。ホームコンサートのようでいいですね。東京ではあまり味わえない雰囲気でしょう。いいですよ、スタジオ・ルンデ。
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