最近行ったコンサート
2001年4月
- 4月21日(土)ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団/朝比奈隆の軌跡2001
ブルックナー:「交響曲第5番」変ロ長調
大阪に行く所用のついでに朝比奈/大フィルのブルックナーを聴く機会を得た。場所はザ・シンフォニーホール。わりとあちこち行く私も大阪だけはほとんど縁がなく、大阪でクラシックを聴くのも初めて。朝比奈を聴くのは何年か前のN響とのブルックナー8番以来。
1週間ほど前にダメもとでホールに電話したら、座席は満席だが、立見席ならあるという。日本のクラシックのコンサートで立見席があるなんて知らなかった。ホールの人の話によると、立見席は毎回出すわけではなく、今回の発売数は約20だという。
「100分間、休憩なしとなりますが、よろしいでしょうか?」と聞かれる。立ち見でもなんでもよい。なにせ、92歳の朝比奈さんが立って指揮をするのですから、贅沢を言ったら罰が当たります。
小雨まじりのザ・シンフォニーホール。よく知らないのですが、わりと新しめのホールでしょうか。舞台後方にパイプオルガンが燦然と輝き、座席が舞台を囲むように配置されているのは東京のサントリーホールとよく似ています。ただホワイエはゆったりめで落ち着きがあり、サントリーホールよりもよい気がします。
立見席は1階席最後列の後ろ。それほど奥行きがないので舞台は近く見えます。私はほぼ中央を陣取りました。ロビーをうろついて戻ってきたら、すでに楽員の方々はステージに出て、各人、曲をさらっています。アマオケならともかく、プロのオケが開演前に舞台で練習しているのはあまり見たことがありません。今日は「ヤル気だな」と思わせます。
コンサートマスター登場後、ややあって朝比奈隆が登場。弦の下降するピチカートで始まる。続いて金管のコラール。力強いが決してうるさくない。ちょっと聴くとごく当たり前のように聞こえますが、聴き進んでいくうちに、このコンビの年輪の深さを知らされます。全休止が多いこの曲、各フレーズの受け渡しが非常に難しいと思いますが、それが実に絶妙なのです。阿吽(あうん)の呼吸とはこのことなのでしょう。それが結果として自信に満ちた音楽となっています。大フィルは初めて生で聴きました。「技術的にいまひとつ」などという批評を耳にしますが、そんなことはまったくありませんでした。アンサンブルも精緻でまったく乱れなし。小気味よいフルートと味のあるオーボエの音色は特に印象的でした。
第4楽章、第1楽章と同じ主題が登場した後、クラリネットが第2主題を予告するところ、クラリネット奏者は音がひっくり返るのも厭わないというほど強いフォルテを吹きます。これをきっかけにオケの体温が何℃か上がったような気がしました。この楽章はブルックナーが書いた音楽でもっとも複雑でかつもっともよく書けた音楽だと思います。最後の頂点に向かって険しい山道を登っていくような趣があります。
そして感動的なコーダ。倍増された金管が全奏されます。目の前に出現した音楽のあまりの大きさに足が震えてしまいました。何と巨大なことでしょう。眼前に巨大な岩壁がそびえたっているような錯覚を覚えます。雄大な自然を前にして言葉が出なくなることがありますが、まさにそれと同じ感覚。何も見えないのにそれを感じさせてしまう音楽。実に不思議です。もう最後は呆然としていました。あの大きさは録音では決して表現できません。ただ金管がうるさく聞こえるだけでしょう。
ブラボーの嵐。僕は朝比奈/大フィルへ、という以上にブルックナーという作曲家に拍手をしていました。いま聴いたあのコーダを思い出すだけで涙腺が緩みました。ただただブルックナーに感謝するのみです。ステージから袖に下がる朝比奈さんの姿が少しにじんで見えました。
ありがとう、ブルックナー。そして、もちろん、朝比奈さん、大フィルの皆さん、ありがとう。
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