最近行ったコンサート
2001年9月
- 9月8日(土)札幌コンサートホールKitara 小ホール
Kitaraのオータムコンサート
ドビュッシー:「映像第1集」より”水の反映”,”ラモーをたたえて”,”動き”
ヒナステラ:「アルゼンチン舞曲集」作品2より”年老いた牛飼いの踊り”,”粋な娘の踊り”,”やくざなガウチョの踊り”
ピアノ:大沢ルリ子
ヒンデミット:「ファゴット・ソナタ」
シューマン:「ロマンス」作品94-2
テレマン:「ファゴット・ソナタ」ヘ短調
ファゴット:笠原禎
ピアノ:矢崎有佳
ベルリーニ:「激しい希求」,「私の美しい偶像よ」
中田喜直:「霧と話した」
小林秀雄:「落葉松」
チレア:歌劇「アドリアーナ・ルクヴルール」より”私は卑しいしもべです”
プッチーニ:歌劇「トスカ」より”歌に生き恋に生き”,歌劇「蝶々婦人」より”ある晴れた日に”
ソプラノ:植田哲子
ピアノ:長谷部祥子
友人の結婚式で札幌に行ったついでにコンサート。札幌コンサートホールは札幌駅から地下鉄で3つめの中島公園で下車。公園のちょうど真ん中にある新しいホール。昨年、旅行で札幌に行った際、ホールの前を通り、次回はここで音楽を聴きたいなと思っていたところ。大ホール、小ホールともにプログラムがあったが、今日は小ホール。(大ホールは吹奏楽のようでした。)シンプルでこぎれいなホールです。
プログラムは、ピアノ独奏、ファゴット、歌曲、と多彩。最初はピアノ。ドビュッシーの「水の反映」。”水”を表現した音楽としてもう一つ思い浮かぶのはラヴェルの「水の戯れ」。ラヴェルのほうは、ほとばしる水の動的な印象を表しているのに対して、ドビュッシーのほうは、題名の通り水面にうつろう色彩の変化を表しているように思います。大沢さんのピアノは繊細で、一音一音がニュアンスに富んだ深さを持っています。1曲目にしてすっかり音楽の世界に引き込まれました。ヒナステラのピアノ曲を聴くのは初めてでしたが、3曲目の「やくざなガウチョの踊り」が圧巻。叩きつけるような打鍵は、プロコフィエフの「戦争ソナタ」の終楽章を連想させます。しかしその激しさはプロコフィエフを上回るほど。こんな曲があったとは。大沢さんは激しくも、ヒステリックにならず、鮮やかな演奏を披露されました。ブラヴァー!
続いてファゴットとピアノの室内楽作品。ヒンデミットはどうも苦手な作曲家で、いくつか彼の作品を聴きましたが、どこがよいか分からない・・・。このファゴット・ソナタにしてもその感想は残念ながら変わりませんでした。次のシューマンはもともとオーボエとピアノのために書かれたそうです。う〜ん、やっぱりこれ、オーボエで聴きたい曲です。最後はテレマン。危うく子守唄になるところでした(^^;)。ファゴットっていつも脇役で、オーケストラの中で最も地味な楽器かもしれません。だから、たまに主役になると何だかちょっと不思議な感じ。バロックでは登場の機会は多いのですがね。
そして、最後はソプラノ独唱。今日のプログラムは独唱の植田さんのお気に入りばかりではないかと思います。どれも熱気のこもった歌唱でした。特に中田喜直の「霧と話した」は、自分の言葉で語るような共感を持って歌っておられ、すばらしかった。ほかに小林秀雄の「落葉松」、チレアの「私は卑しいしもべです」がよかったと思いました。高音にもう少し深みが加わればさらにいいかなと思います。
- 9月9日(日)昭和女子大学人見記念講堂
世田谷フィルハーモニー管弦楽団第24回定期演奏会
世田谷区民合唱団第11回定期演奏会
フォーレ:「レクイエム」作品48
ドビュッシー:「牧神の午後への前奏曲」
ラヴェル:「ダフニスとクロエ」第2組曲
指揮:小泉ひろし
ソプラノ:松永知子
バリトン:坂本秀明
合唱指揮:金川明裕
魅力的なプログラムに惹かれ、約1ヶ月ぶりのオーケストラコンサート。3曲とも私のお気に入りの曲。特にフォーレのレクイエムはそうたびたび演奏されないので楽しみ。今回は世田谷フィルと世田谷区民合唱団の合同定期ということで、お客さんもいっぱい。満席に近い状態でした。
合唱団はかなり大所帯のようで、相当の人数(100人くらい?)がステージに上がりました。このホールにはオルガンはないのでエレクトーンで代用されていました。フォーレのレクイエムは、いい意味で宗教くさいところがなく、とても聴きやすいので愛聴しています。特に全7曲中4曲目の「ピエ・イエズス」以降は、私の寝るときの音楽の定番です。
1曲目。オーケストラの合図に続き合唱が登場。好きな曲を生で聴く喜びがわいてきます。オーケストラは丁寧でなかなか美しい。「ピエ・イエズス」はソプラノの見せ場。松永さんは、澄んだよく通る、そして深みのあるお声を聴かせてくれました。私は張り上げるようなソプラノは苦手で、清楚で気品のあるソプラノが好きなのですが、松永さんの声にはとても好感を持ちました。5曲目「神の子羊」。私はこの章が一番好きです。ヴァイオリンの奏でる旋律の何と優しいこと・・・。「慈悲」という言葉がぴったりのような心に染みる音楽です。泣けてきます。演奏もすばらしかった。演奏者の方も演奏しながら感じ入っていたのではないでしょうか。
休憩をはさんで、これまた私の眠りの音楽の定番、「牧神の午後への前奏曲」。有名な曲ですが、意外に演奏される機会が少ないと思います。この曲ではフルートが活躍しますが、今日のフルート、なかなかよかったです。フルートに限らず、この曲はリズムの取り方がとても難しいと思いますが、よく息の合った演奏でした。
最後は「ダフニスとクロエ」。私は1999年の1月に全曲のバレエ上演を見ましたが、そこで感じたのは「音楽がすばらしすぎて、バレエが霞んでしまう」ということでした。ここにはラヴェルの才能のすべてが花開いていると言ってもいいと思います。今日は第2組曲のみですが、合唱団もいるので合唱が入ります。オーケストラは技巧的にかなり大変だと思いますが、破綻することなくよくまとまっていました。小泉さんの指揮は、派手さはありませんがとても丁寧な指揮ぶりが印象的。合唱はもう少し吠えてもよかったかな?でも最後の「全員の踊り」はよくまとまっていました。
- 9月16日(日)彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
彩の国ブラームス・プロジェクトU
ブラームス:「悲劇的序曲」 作品81
ブラームス:「ヴァイオリン協奏曲」ニ長調 作品77
ブラームス:「交響曲第2番」ニ長調 作品73
ヴァイオリン:竹澤恭子
指揮:現田茂夫
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
前回、とても感動した現田茂夫/神フィルのブラームスシリーズ。記録を見ると今年の1月、私の新年最初のコンサートだったのでした(→感想はこちら)。あのときは寒かった記憶があるもんな。時が過ぎるのは早いもの。
さて、ホールがそれほど大きくないこともあり、ほぼ満席。当日券買いがふつうの私ですが今日は危なかったかも(でもA席3000円は安い)。前回印象に残ったかっこいいコン・マスのお兄ちゃんが今日もいます。最初は悲劇的序曲。ヴァイオリンの明晰な音を聴いて、これぞ神フィル!と思います。音がバシッとそろって気持ちがいい。かと言って神経質にもヒステリックにもなりません。出てくる音は暖かく情熱的。プログラムに「ブラームスの音楽には歌が流れている」と語っている現田氏の指揮はまさにその通り。音楽とともに呼吸し、歌うような音造り。こんなに聴いていてうれしくなる「悲劇的序曲」は珍しいと思います。
続いてはヴァイオリン協奏曲。実はこの曲、生で聴くのは今日が初めて。そもそも私、ヴァイオリンの曲というのは一般にあまり積極的に聴きません。嫌いではないのですが、ピアノとヴァイオリンだったらピアノの音が好きなのです。(これは単にピアノは自分で弾いたことがあるから、という単純な理由からでしょう。)今日のソロは、竹澤恭子さん。お名前はよく存じておりますが、演奏を聴くのは初めて。
オーケストラの序奏の後、ヴァイオリンが登場。はじめはやや線が細いかなという気がしましたが、その繊細な音色には魅せられました。フォルテッシモからピアニッシモまでその表現の幅の大きさは見事なもの。耳元で語り掛けるような生々しい音に鮮烈なものを感じました。そしてここでもオーケストラのすばらしさと言ったら!竹澤さんも気持ちよく演奏されたのではないでしょうか。会場からは大きな拍手が送られ、彼女も大変満足そうでした。ただ演奏とは別の話ですが、率直な感想として、第1楽章はちょっと長いかなと(ピアノ協奏曲第1番も同じ位ですけど)。第2楽章はいい音楽ですが、眠たくなるのが欠点かなと・・・。以上たわごと。
さて後半は交響曲第2番。冒頭のホルンに続くフルートの美しさが新鮮。明晰な音造りは変わりません。音が混濁することがなく、各声部が手に取るように分かります。テンポは全体に早め。第2番の交響曲は明るくのびのびした雰囲気を持った曲ですが、ブラームス特有の陰りが漂っています。今日の演奏では、その陰りというかほの暗さが少し薄くなってしまった感はあります。現田/神フィルならではの演奏ではありましたが、音楽の持つ雰囲気とは少し差異があったかなという気がします。そこが演奏のおもしろくも難しいところ。こんどはブラームス以外にもぜひこのコンビで聴いてみたいものです。
- 9月23日(日)狛江エコルマホール
東京電機大学OB管弦楽団第11回定期演奏会
ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より第1幕への前奏曲
ブルックナー:「交響曲第5番」変ロ長調
指揮:鎌田由紀夫
ブルックナーの5番を聴きに行った。エコルマホールは小田急線狛江駅前。来るのは初めてだが、中規模のなかなか小奇麗なホール。このオーケストラのコンサートも初めてだが、本体とも言うべき東京電機大学管弦楽団には何回か足を運んでいる。そこで指揮者の家田厚志さんが、「うちのオーケストラは技術はないけど、みんな音楽が好きになって卒業していきます。社会人になってからも活動を続ける人が多いんです。」とおっしゃっていたのが印象に残っています。
最初のワーグナー。音が力強く、生き生きとしています。まっとうな演奏と言えばそうなのですが、聴いていて元気が沸いてくる、そんな演奏。ブルックナーに期待が持てます。
そして、ブルックナー。全体に速めのテンポですが、私としては速いぐらいの演奏が好きです。金管もよく鳴ります。が、決して騒ぎすぎない。そして、聴き進むうちにだんだん見えてきましたが、みなさん、ブルックナーの音楽を完全に自分の音楽として演奏されている。
クラシックが好きな人でも「ブルックナーはちょっと・・・。」という人は少なくありません。思うに、ブルックナーの音楽には”ブルックナー語”とでも言うべき独特の音楽があるように思います。ただ楽譜を追っただけではブルックナーにならない。英語を「カタカナ読み」しても英語に聞こえないように、ブルックナーには独特の「語調」があるんだと思います。
それを楽員のみなさんはすっかりマスターされていると思いました。いや、それ以上に「ブルックナーを弾きたい!」という熱意のようなものをひしひしと感じます。指揮者の鎌田さんのご指導の成果かもしれませんが、とにかく、「これぞブルックナー!」という音が出てくるのです。ブルックナー好きの私にとってはたまりません。そして、各楽器のバランスが絶妙。どれも出過ぎず、しかし出るべきところは出る。確かにミスはありますよ。でもこんなにゾクゾクする音楽を聴かせてくれるんですから全く気になりません。
第4楽章。本当にすばらしい音楽です。特にコーダ!体が浮上するような錯覚に陥ります。足がワナワナ震えます。何という音楽なのでしょう!もし、鳥になって大地の上を羽ばたくことができたら、こういう気分なのでしょうか。言葉では何とも表現し難いのですが、大自然、そして生けとし生けるものすべてに畏敬の念を表したい気持ちです。こんな巨大な音楽を書いたブルックナーとは、何と壮大な人物だったのでしょうか!
この曲は今年の4月に朝比奈隆指揮大阪フィルの演奏を聴きました。あれは紛れもない名演でしたが、今日の演奏も決してそれに引けを取りませんでした。4楽章の途中で勢い余って指揮棒が飛んでいってしまうというハプニングがありましたが、楽員は全く気にすることなく熱演を続けました。アマチュアとかプロと言って私は言い分けていますが、そんな区別はくだらないのかもしれません。要は、音楽家としてどうあるかが大事なのです。真実は、東京電機大OB管弦楽団は一流の音楽家集団である、ということです。よいブルックナーをありがとうございました。
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