最近行ったコンサート
2002年7月
- 7月13日(土)東京芸術劇場 大ホール
新交響楽団第178回演奏会
ワーグナー:「ファウスト序曲」
ブルックナー:「交響曲第8番」ハ短調(ノヴァーク版)
指揮:飯守泰次郎
アマオケのブルックナーと聞けば、うずうずする。どんなおもしろい演奏をしてくれるだろう?と想像してしまう。今日はアマオケと言っても、名門の新響。最初、コンサート情報誌の「ぶらあぼ」を見たら、指揮者が”飯森範親”とあったので、どんなものかと思っていたら実は同じイイモリでも”飯守泰次郎”の間違いだったらしい(後日訂正が載った)。”泰次郎”さんは最近、ブルックナーのCDも出されていますが、実際の演奏を聴くのは今日が初めて。
最初はワーグナーの「ファウスト序曲」。プログラムの中で、飯守さんは「出来は確かにいまひとつの曲だが、分かりやすく演奏することを心がける」との主旨を述べている。冒頭、不気味な弦楽器のざわめきで始まる。全体に劇的な雰囲気のある曲で、わりとしっかりした曲だとは思ったが、ワーグナーらしくないと言えば確かにそうだ。また聴きたい、と思うほどではない。
さて、メインのブルックナー。第1楽章は少し速めのテンポ。流れはスムーズで、アンサンブルも悪くない。しかし、ティンパニが弱々しいせいもあるのか、こちらに迫ってくるものが感じられない。結局、第1楽章は全くドキドキできなかった。あまりにもこの曲を何回も聴きすぎて、自分の感性が鈍ってしまったのかと、少し自信喪失。今日の演奏会は収穫なしかと思ったが、第2楽章は速めのテンポが心地よく、ティンパニも元気に鳴っている。まあまあいいかな。
そして第3楽章。冒頭の低弦が鳴ったとき、これはなかなかいいぞと思う。さきほどまでとは打って変わり、ゆったりと落ちついたテンポ(アダージョだから当たり前ではあるが)。オーケストラの音がいままでと違う。”自分の出したい音”を出しているような気がする。そう、指揮者が欲しい音と奏者の出したい音がぴったり合っている。だから音楽に無理がない。会場がブルックナーの宇宙に包まれる。25分以上もかかる長い楽章だが、もうこうなったらいつまでもこの時間が続いてくれと思う。後半のクライマックスの後、クラリネットがホルンの合間に名残惜しそうに吹くところ、何と心のこもったクラリネット!そして、すべてが宇宙に消えていくような弦の和音。最後の音が消えていくときの静寂。ああ、何と崇高な音楽なのでしょう。そして何と崇高な演奏。ここまでの高みに達するのは容易なことではありません。私は心の中で「ブラボー」と叫びました。
そして静寂を破って第4楽章の激しい音楽。やはりオーケストラは最初とはまったく違ったオーケストラになっていました。指揮者がいなくても演奏できるのではないかと思うほど、意欲にあふれているのがはっきり分かります。そう、ブルックナーの音楽が求めるのはこの「意欲」なんです。正確に楽譜をなぞっても出てこない音が、ブルックナーの音楽には潜んでいるのです。しかし、一度このブルックナー独特の「言葉」が読めるようになると、もう表現したくてたまらなくなるのではないでしょうか。そなったら、もう安心!誰も教えなくてもブルックナーは勝手に自分の中から出てくる。そんな不思議な作曲家だと私は思います。終楽章はそういう演奏でした。テンポも大きく動き、第1楽章のときは全く印象が違います。何だ、最初からこの調子で演奏してくれればよかったのに!と思いますが、そこがまあライヴならではでしょう。
飯守さんのブルックナー自体はなかなか面白く聴きましたが、また10年経ったらもっと深い演奏になってくるかなと思います。楽しみにしています。
- 7月21日(日)東京芸術劇場 大ホール
第138回宇宿允人の世界
ベートーヴェン:序曲「コリオラン」
ベートーヴェン:「交響曲第2番」ニ長調 作品36
ベートーヴェン:「交響曲第6番」ヘ長調 作品68<田園>
指揮:宇宿允人
管弦楽:フロイデ・フィルハーモニー
宇宿さんのコンサートは久しぶり。1年ぐらい行ってなかったかな?と思って、過去の感想を遡ってみたら、何と2年半も行ってないではないか!(1999年12月の第九)何ということだ。自分は宇宿さんのファンだったつもりなのだが・・・。
今日の曲目は、ベートーヴェンを最も得意とする宇宿さんなので、もう何回も演奏していると思われるが、恐らく聴くのは初めて。会場は満席に近い。ところが、開演前、アナウンスがあり、「指揮者の体調不良により、開演を15分遅らさせていただきます。」とのこと。大丈夫だろうか?しかし、宇宿さんは現れました。やや弱々しい足取りに見えたが、あれはいつもああいう感じなので問題ないようだ。
最初の「コリオラン」。重厚なティンパニ。2年半前と奏者は違うが、やや後拍気味のティンパニの叩き方は宇宿さんならでは。第2主題の牧歌的なメロディをしみじみ歌うところがとてもいい。これまで宇宿さんの指揮で、「エグモント」、「レオノーレ第3番」の序曲も聴いたが、どれもすばらしい名演だった。ベートーヴェンとはこういうものか、と思わせる密度の濃い演奏である。
続いて「交響曲第2番」。ベートーヴェンの交響曲の中では一番地味な部類に入ると思うが、演奏頻度はそれほど低くない。「1番」よりは多いのではないか。地味ではあるが、意外に複雑な曲でベートーヴェン初期の力作だと思う。
宇宿の棒が下りる。冒頭のダダーン、という序奏から力強い。弦の音の何とみずみずしいこと。アンサンブルもぴったり。音楽が生きている!ベートーヴェンの2番って、こんなに楽しい曲だったっけ?と思わせるほど。オーケストラが指揮者、そして聴衆と完全に一体化した時間。”至福”と言うにふさわしい。これが演奏会ごとに集まるだけの「臨時オケ」であることが信じられない。これだけ親密度の高い演奏ができるのはプロと言えども、往年の「セル/クリーヴランド」とか「オーマンディ/フィラデルフィア」といった”黄金コンビ”だけではないか。決して誇張ではなく。本当に最初いから最後まで息をつかせない、圧倒的な演奏でした。終演後の会場の拍手も「こりゃ参った!」という客席の反応が伝わってくる気がしました。
後半の「田園」。第1楽章はさきほどの「2番」に比べると、ややアンサンブルにしまりがなく、あれっと思いましたが、第2楽章はテンポもゆったりして流れがスムーズで、こちらもいい心地に。第4楽章の嵐はティンパニが轟き、力強いがはめをはずすことはない。そして嵐が過ぎ去り、第5楽章。
何と美しい自然!風がそよぎ、鳥が歌う。ベートーヴェンがどんなに自然を愛していたかが痛いほどよく分かる。あの気難しいと言われるベートーヴェンが、嬉しくてたまらず、森の中を走りまわっている様子が目に浮かぶ。そのあまりの純粋さに、僕は心を動かされ、気づいたらほろりとしてしまいました。いままで演奏会で目が潤んだことはありますが、涙が頬を伝ったのは初めて。
実は「田園」を実演で聴くのも今日が生まれて初めてだったのです。いままでCDでは何度も聴いていますが、ここまで感じることはありませんでした。やはり音楽は生演奏がいいということでしょう。
ベートーヴェン、いい音楽をありがとう。そして宇宿さん、今日はいい演奏をありがとう。
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