最近行ったコンサート
2002年10月
- 10月5日(土)NHKホール
NHK交響楽団第1469回定期公演
ブルックナー:「交響曲第8番」ハ短調
指揮:ヨアフ・タルミ
N響は、日本で一番メジャーなオーケストラだが、意外に定期公演に行く機会が少ない。休みの日に行けるのが、土曜日のC定期だけしかないのも理由だが、会場がNHKホールというのも魅力を減じる一因かもしれない。(B定期はサントリーだが、平日なので行ったことがない。)今日は大好きなブルックナー。指揮者は当初、エフゲーニ・スヴェトラーノフだったが、今年の5月3日に73歳で亡くなってしまった。彼のブルックナーはぜひ聴いてみたかった。残念である。代役として登場するのは、ヨアフ・タルミ。イスラエル生まれの指揮者。名前は聞いたことがあるが、はたしてどんな演奏を聴かせてくれるのか?
第1楽章。冒頭はある意味オーソドックス。まだ個性が見えてこない。淡白なブルックナー。しかし曲が進むにつれ、特徴が見えてきた。テンポはやや速め。フレーズの受け渡しは極めて自然。一般に男性的でごつごつしたイメージのあるブルックナーだが、タルミの手にかかると、実に女性的で優美な曲として奏でられる。ティンパニは控えめだが、タルミの演奏の様式には合っている。第2楽章も速めのテンポが心地よい。楽器のバランスが絶妙で、曲の構造が手に取るように分かる。第3楽章。弦楽器のやわらかな音色、まるで室内楽を聴くかのような内向きで緻密な響き。こういう傾向の演奏は初めて聴く気がする。クライマックスは、大げさではないものの適度の爆発があり、禁欲と開放のバランスがよい。第4楽章も相変わらず流れがスムーズで不自然なところが全くない。ブルックナー8番を生で聴くのは6回目(*)だが、今回の演奏が一番充実し、満足のできる演奏だった。(強奏時のトランペットが濁り気味だったのが唯一の汚点。これはオケに問題あり。)一聴すると何もしていないような演奏だが、よく聴くと実によく咀嚼された演奏だということが分かる。控えめでありながらこれだけ訴えかけてくるもののある演奏は、そう簡単に聴けない。もともとスケールの大きな曲だから、大きな音でバリバリやれば、さまにはなる。しかし、これだけよく分析し、かつそれを実際の音として再現する力量はたいしたものである。ヨアフ・タルミ、優れた指揮者だ。
(*)94年に末永隆一指揮東京工業大学管弦楽団、同年ワルベルク指揮N響、97年に朝比奈隆指揮N響、00年に笹崎榮一指揮戸田交響楽団、02年飯守泰次郎指揮新交響楽団、そして今回。うわぁ、N響はあまり来ないと言っておきながら、ブルックナー8番だけで3回も来ている・・・。記録が自分のブルックナー好きを証明してますなぁ。。
- 10月5日(土)大田区民ホール アプリコ大ホール
ウェストフィールド管弦楽団第14回定期演奏会
ウォルトン:「リチャードV世」前奏曲
コープランド:バレエ音楽「ロデオ」より4つのダンスエピソード(カウボーイの休日/牧場の夜想曲/土曜日の夜のワルツ/ホー・ダウン)
ドヴォルザーク:「交響曲第9番」<新世界より>
指揮:今井治人
ウェストフィールド管弦楽団は、確か1998年にショスタコーヴィチの交響曲第8番を聴いている。とても緊張感のある演奏で、感動した記憶がある。
ウォルトンはまだ自分としては親しんでいるといえる作曲家ではないが、オラトリオ「ベルシャザールの饗宴」をCD(オーマンディ指揮)で聴いて、大変才能のある作曲家だという認識を持っています。「リチャードV世」前奏曲は、冒頭は華々しく始まり、途中の不気味な箇所を経て、最後はジョン・ウィリアムズさながらにかっこよく盛り上がります。意外に長い曲でちょっと疲れました。続くコープランドの曲も初めて聴きます。第1曲目は元気な曲ですが、ウォルトンとは少し傾向が違い、もっとからっとした、言ってみればアメリカ的な健康的な音楽。第2楽章はタイトルの通りやすらぎの音楽。第4楽章では、派手に盛り上がって決まりますが、全体としてどうかと言えば、ややまとまりのない曲のように思いました。どうもアメリカの作曲家の音楽は苦手です(アイヴス、ガーシュインもあまり好んで聴かない)。
後半はメインの「新世界より」。冒頭、かなり遅いテンポで、音楽が止まってしまうんじゃないかと心配になるほど。ティンパニはなかなか豪快でいい。トロンボーンも力強い。今井さんの指揮は明晰で流れがスムーズです。演奏は、特別悪い所はなかったが、もう少し全体のまとまりがほしいところでしょうか。音の出だしは比較的よく合っていたので、練習はよくやられていると思いますが、個人の技術レベルに差があるのは致し方ないところでしょうか。プログラムを見ると、ヴァイオリンの半分以上が”賛助”となっているのが気になります。(終演後、いっしょに行った友人N氏とアマチュア・オケの運営の難しさについて、いろいろ話したのでした・・・。)ひとり、第2楽章のイングリッシュ・ホルンは、絶品でした。これだけはこれまで聴いた最高の演奏でした。彼(名前が分かりませんが)の音楽性はすばらしい!
指揮者は音楽的にすばらしい方だと思いますので、これからも何とか続いていくことを願っております。アンコールのスラヴ舞曲第3番は、よい演奏でしたよ!
- 10月12日(土)町田市民フォーラム
木管アンサンブルクレッシェンド第5回コンサート
(1)チマローザ:「2本のフルートのための協奏曲」ト長調
(2)ドヴォルザーク:「スラヴ舞曲」作品46より第1,2,3,8曲
(3)J.ジョーダン:「LITTLE RED MONKEY」
(4)ビゼー:「アルルの女」第1組曲より”鐘(カリヨン)”
(5)ギロック:「妖精メドレー」
(6)モーツァルト:セレナード第13番ト長調<アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク>より第1楽章
(7)エドワード,ラロッカ,スバーバロ,シールズ:「クラリネット・マーマレード」
(8)L.アンダーソン:「シンコペイテッド・クロック」
(9)ハイドン:「ディヴェルティメント」変ロ長調
(10)ベートーヴェン:「ヴァイオリン・ソナタ第5番」<春>より第1楽章
(11)イベール:「トリオのための5つの小品」
(12)J.シュトラウスU世:ポルカ「観光列車」
(13)S.ジョプリン:「ジ・エンターテナー」
(14)ビートルズ(鶴岡敬一編):ビートルズメドレー(The
Long and Winding Road/She Loves You/Ob-La-Di
Ob-La-Da/Something/Let It Be)
編成:(1)Fl×3,pf/(2)Cl×2,pf/(3)Fl×3,pf/(4)Fl×2,pf/(5)Fl,Cl/(6)Fl×3,Alto
Fl/(7)Cl×4,(8)Fl×4,Perc/(9)Fl,Ob,Cl,Hr,Fg/(10)Fl×2,Cl,Fg/(11)Fl,Cl,Fg/(12)Fl,Ob,Cl,Hr,Fg/(13)Fl,Ob,Cl,Hr,Fg/(14)Fl,Ob,Cl,Hr,Fg
今日から3連休。天気は快晴。芸術の秋・・・、ということでふらりとコンサートに出かける。町田市民フォーラムのホールはディスクユニオン町田店のあるビルの3Fにある小ホール。プログラムを見ると、かなり多彩な内容で楽しめそう。
最初に前奏として最近、平井賢の歌で話題を呼んでいる「大きな古時計」をフルート四重奏で。次のチマローザはオーボエ協奏曲が有名でしょうか?典型的な古典時代の作品といった感じです。気持ちよくなって一瞬、記憶が飛びそうになったが、スラヴ舞曲で目が覚めます。最近、スラヴ舞曲を聴く機会が多いせいもあって、ますますこの曲集が好きになっています。今日はクラリネット2本とピアノ伴奏で。これだけの編成でやるのは大変だと思いますが、これがなかなかいい。迫力は管弦楽版には劣りますが、ひなびた味わいがあってとてもいい。ジョーダンの曲は昔の映画音楽かしら??聞いたことはあります。ビゼーの曲は素朴で爽やかでいいですね。フルートの音色がぴったり。ギロックは、フルートとクラリネットだけの2重奏。どこか”ねこふんじゃった”に似てる曲。息を合わせるのが難しそうですが、よく合っていました。アイネ・クライネ…は、フルート四重奏。爽やか。本当に名曲ですねこれは。次はクラリネット四重奏。高校生のメンバーで、急に若返ります。シンコペイテッド・クロックは、トライアングルの代わりに風鈴を使っているのが面白い。ここで前半終了。
ハイドンのディヴェルティメントは、初めて聴きましたが、なんとブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」の原曲なのでした。全4楽章で、第2楽章があの”ハイドンの主題”なのです。本当は2管編成とのことですが、今日の演奏も楽器は同じ。ブラームスの変奏曲の出だしとほとんど同じ。そして第4楽章は、第2楽章の主題の変奏です。ブラームスの新発見の変奏を聴くようで、わくわくしました。(もちろんハイドンの方が先なので話が逆ですが。さらに、そもそもこの主題は賛美歌”聖アントニーのコラール”の引用なのだそうです。)それぞれの楽章は2,3分の短いもので、気の会う仲間たちで気軽に合奏を楽しむといった雰囲気。
ベートーヴェンの春はいろいろな編成で演奏されますが、今日のも新鮮でした。(でもやっぱりヴァイオリンが一番いいのだけど。)イベールは、5つの短い曲から成ります。これも音楽仲間と気軽に合奏を楽しむ雰囲気。Jシュトラウスの観光列車は、この編成でも違和感がありません。木管の中にホルンが1本入っていますが、これがほのぼのとしたいいアクセントとなっています。エンターテナーは私でも知っています。最後は指導をされている先生(今日の司会者)も入ってのビートルズメドレー。ビートルズは曲がしっかりしているためでしょうか、どんな編成にしても違和感がないですね。
最後に出演者全員がステージに。総勢20名強でしょうか。大きく高校生グループとおばさんグループ(と言っては失礼な方もいますが)に分かれるのでしょうか。ほとんどが女性。弦楽アンサンブルの団体はけっこうあると思いますが、木管のアンサンブルは比較的珍しいかもしれません。しかもこれだけの人数がいるところは。これからもぜひ活動をお続けください。
- 10月13日(日)第一生命ホール
マリア・クリーゲル チェロリサイタル
E.S.トゥール:「デディケーション」
ベートーヴェン:「チェロ・ソナタ第5番」ニ長調 作品102-2
B.オア:「カルメン幻想曲」
ドビュッシー:「ノクターンとスケルツォ」
グリーグ:「チェロ・ソナタ」イ短調 作品36
チェロ:マリア・クリーゲル
ピアノ:ニーナ・ティッヒマン
マリア・クリーゲルというチェリストをご存知でしょうか?そう、知る人ぞ知るNAXOSレーベルの看板チェリストです。もう発売されたアルバムは15枚くらいになるでしょうか。私が初めてクリーゲルを聴いたのは、ショパンのチェロ・ソナタ他が入っているアルバム。演奏者などどうでもよく、曲目がよかったから買ったのですが、聴いているうちに、「このチェリスト、いいなぁ」と思ったのが私のクリーゲル・ファンの始まりです。正直、チェロという楽器はあまりいいとは思っていなかったのですが、彼女のCDを聴いて以来、少し見方が変わり、せっせと彼女のCDを集めました。
あれほどCDを出していながら、NAXOSというコマーシャリズムにあまり乗らないレーベルのためか、彼女が実際にどのような演奏活動をしているかはよく分かりませんでした。そこへ、来日の情報を知り、楽しみに出かけたわけです。
第一生命ホールは昨年の秋に開館したばかりの新しいホール。晴海のトリトンスクエアの中にあります。低層階にはショッピングモール、上層階にはオフィスが入っています。いつの間にこんなところに新名所ができていたんですねぇ。ホールはカザルスホール(閉館してしまいましたが)と同じくらいの中規模ホール。
会場は7割ほどの入りでまずまず。ステージにクリーゲルさんとティッヒマンさんが登場。ティッヒマンさんとは、最近ベートーヴェンのチェロ作品のシリーズが発売されました。最初はエストニアのトゥールという作曲家の1990年の作品。ティッヒマンさんがピアノの前に立ったまま座らないので、どうしたのかと思っていたら、もう曲は始まっていました。そしてピアノ線を直接グリッサンドします。おお、現代曲だ。チェロが瞑想的なメロディを奏でます。どこか吉松隆の曲を想起させます。北国の静寂を、ときどきピアノ線のグリッサンドが断ち切ります。奥行きを感じさせる曲でなかなか気に入りました。
次はベートーヴェン。ベートーヴェンのチェロ・ソナタは5曲ありますが、私はどれも記憶に残っていません。かろうじて第3番がいいかなと思う程度。この第5番も印象的なメロディが出てくるわけでもなく、さすがのクリーゲルさんが弾いても魅力がよく分かりませんでした。第2楽章などは、瞑想の音楽といってもよく、会場も首をうなだれている人がけっこういました・・・。第3楽章の冒頭は、「みなさん、朝ですよ、目を覚まして〜!」と言っているように私には聞こえます。
次のオアは、スコットランドの人。ビゼーの「カルメン」をテーマにした曲はいろいろあって、サラサーテやシチェドリンが有名です。これは1985年に作曲されたまだ新しい曲ですが、いくつかの主題がちゃんと出てきて、変奏も調性にかなった分かりやすいもので、けっこう楽しめます。随所に技巧的なところがあり、クリーゲルさんの本領が発揮されました。CDで聴くのと同じく、スケールが大きく、音色が美しい。
休憩を挟んで、ドビュッシー。これは彼の20歳の若いときの作品とのこと。洒落たサロン風の音楽で、クリーゲルさんの美音が生きていました。最後はグリーグのソナタ。聴くのは初めてかもしれません。これは彼が弟の死を悼んで作った曲だそうで、第1楽章から、グリーグにしては激しく熱い音楽となっています。なかなか聴き応えがあります。終結部は有名なピアノ協奏曲の同じく第1楽章の終結部とよく似ています。第2楽章は少し静かになりますが、叙情的という感じではなく、彼の内面が歌われている感じがします。第3楽章は、ピアノ協奏曲と同じく、舞曲風の主題。これが何度も現れ、変奏されていきます。ただ、ちょっとこの第3楽章はちょっと冗長な気がしました。長さを半分くらいにすれば、もう少し聴きやすい曲になるのになぁ、と勝手なことを考えました。
会場からの拍手に応えて、アンコール。ラヴェルの「ハバネラ」。ラヴェルは好きな作曲家です。続いて、ダンツィの「モーツァルトの歌劇<ドン・ジョヴァンニ>の主題による変奏曲」。初めて聴きましたが、テーマはオペラを知らない私でも知ってる有名なテーマ。なかなか気の利いた作品です。さらにもう1曲、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」。クリーゲルさんのつややかなチェロが切々と歌います。ティッヒマンさんは、明晰でくっきりとした伴奏をするピアニストで、どちらかと言えば自由奔放なクリーゲルさんのチェロをよくひき立てていたと思います。
クリーゲルさんの演奏は、ほぼCDで聴いてきた印象と同じ。スケールが大きく、ロマンティックな演奏。人によっては、技術的な詰めがやや甘いと言うかもしれません。確かにもっと技巧的にうまい人はたくさんいます。でも、あれだけたっぷりとチェロを鳴らしてくれるチェリストはたくさんはいないと思います。
今日のプログラム、欲を言えば、もう少しポピュラーな曲を入れて欲しかったかなぁ。ちょっと渋いかな・・・。でも渋いプログラム専門(?)の第一生命ホールだからこれでよかったのかな・・・なんて思います。今度はコンチェルトを聴いてみたいな。
- 10月25日(金)東京藝術大学 奏楽堂
東京藝術大学管弦楽研究部第300回定期
スメタナ:交響詩「わが祖国」
(1)高い城,(2)モルダウ,(3)シャールカ,(4)ボヘミアの森と草原から,(5)ターボル,(6)ブラニーク
指揮:小林研一郎
藝大オケはすごいよとN氏から誘われ、出かける。上野駅から東京文化会館のわきを通り、上野公園を横切って、旧奏楽堂の前を通り、芸大構内に入る。奏楽堂は初めて来る。ホールに入ると、正面にパイプオルガンがそびえる。なんと立派なホールだこと。特にこのオルガンは見事だ。洒落た装飾、大きさとも東京の他のホールを越えている。さすが日本の藝術の殿堂、藝大である。
コバケンの「わが祖国」。そう、ご存知の通り、世界的に有名なプラハの春音楽祭のオープニングで今年、小林さんはこの曲を指揮したのである。だれもが期待する演奏会、客席は満席に近い。
団員に続いて小林さん登場。一番前の席に座ったので、目の前でお辞儀をされる。こちらもちょっと緊張。第1曲、高い城。ハープが力強く序奏を奏でる。ホールの音響がすばらしい。満を持して弦が主題を奏でる。その音色のふくよかで美しいこと。川辺からふわっと舟に乗り移ったような心地よさ。美しい音楽である。この高い城はモルダウに次いですきな曲だ。第2曲モルダウ。冒頭のフルートが鮮やか。クライマックスではオーケストラが吠える。それにしても何と輝かしい音だろう。こんなに生き生きとしたオーケストラの音を聴くのは久しぶりだ。会場の空気が生き物のように動き出す。技術的にはもう完璧と言っていい。ぴしりと揃ったアンサンブルを聴くだけでも快感である。しかし、それ以上の音楽への情熱がひしひしと伝わってくる。もう、こうなると言葉も出ない。目の前で繰り広げられるドラマにただただ唖然としている。第3曲、シャールカ。小林さんの指揮にはますます熱が入る。オーケストラはますますすばらしい。やはり言葉がない。至福。ここで休憩が入るが、小林さんは団員に向かって「ありがとうございました」とひとこと。団員からも満足の笑みがこぼれる。
第4曲、ボヘミアの森と草原より。わが祖国の中では一番情景的な音楽。9月にこの曲を聴いたときは、”やや冗長な音楽”と書いたが、今日はぜんぜんそんな気がしない。この音にずっと浸っていたいと思う。第5曲、ターボル。やや土俗的で象徴的な音楽になる。第6曲、ブラニーク。間を空けずに入る。ターボルのテーマが引き継がれる。途中、木管を中心とした牧歌的なさえずりが聞こえてくる。この曲が完成する頃にはスメタナの耳はほとんど聞こえなかったそうである。ここの部分は、スメタナが昔聞いた音を思い出して懐かしんでいるような気がして、胸が痛む。そして最後は高らかに全曲を回想し幕を閉じる。
何とすてきなひとときだったことか。小林さんの熱意には本当に信じられないくらい感服させられます。そして、藝大オケの団員の方のひたむきさに心から拍手を送ります。これぞ音楽藝術の理想の姿です。美しい。
人間には限界などないのです。全力を出し尽くして初めて見えてくる世界がある。あなたは全力で生きているか?そんな問いを投げかけられたような、衝撃的な演奏会でした。あれを聴いて人生観が変わったと言う人がいても、おかしいとは思いません。それほど圧倒的でした。
- 10月27日(日)町田市民ホール
町田フィルハーモニー交響楽団第55回定期演奏会
有馬礼子:交響詩「宮古」
有馬礼子:交響幻想曲「八重山」
ベートーヴェン:「交響曲第9番」ニ短調<合唱付>
ソプラノ:橘洋子,メゾ・ソプラノ:菅有実子,テノール:伊達英二,バリトン:多田羅迪夫
合唱:町田フィルハーモニー合唱団
指揮:荒谷俊治
この時期に第九とは珍しい、と思うほど日本では12月に第九をやるのが当たり前のようになっている。しかし今回は意味のある、第九の演奏会である。今年は沖縄の本土復帰30周年、縁あって、宮古島で町田フィルが第九の現地初演を行うことになったのである。東京では、12月だけでも何十回という第九が演奏されている裏で、この曲が世に出て180年近く経ってまだ一度も演奏されたことのない地域が日本にもたくさんあるのである。今回は、宮古島の平良、石垣島での公演後のホームグラウンドでの凱旋公演となる。
最初に今回のシリーズのために有馬礼子氏が作曲した交響詩「宮古」と交響幻想曲「八重山」が演奏された。「宮古」は出だしのトランペットから、沖縄の雰囲気が漂う。全部で12分ほどの曲で、いわゆる現代音楽のように難解ではなく、親しみやすい曲調。「八重山」は約7分ほど。お祭りの雰囲気でさらに楽しめる曲でした。
さて、メインの第九。第1楽章、やや速めのテンポで進みます。オーケストラは、まとまりがよく、凝縮した音を聞かせます。ティンパニも豪快。荒谷さんの指揮はどちらかと言えば、剛直ですが、間然とするところがなく流れが自然。氏はジョージ・セルのもとで学んだことがあるそうですが、そう言われればなんとなく納得するものがあります。第3楽章も速めのテンポでさらりと演奏します。第4楽章、チェロが語るところでは本当に人が話しているように聞こえます。バリトンに続いて合唱が入ります。声量もなかなかですが、発声が明瞭で抑揚をよく付けているのが印象に残りました。この合唱団はオーケストラともよく共演しており、市民合唱団にしてはかなりレベルが高い団体のようです(実は私の父がバスで出ているのです…。)最後も見事に決まり、演奏、プログラムともどもなかなか充実したコンサートでした。
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