最近行ったコンサート
2002年12月
- 12月8日(日)サントリーホール
読売日本交響楽団第411回定期演奏会
エルガー:「チェロ協奏曲」ホ短調 作品85
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」作品40
チェロ:堤 剛
指揮:大植英次
この前のゲルギエフの演奏会と同じく、知り合いの方から譲っていただいたチケットで読響の演奏会に行く。曲目はいずれも私の好きな曲である。エルガーのチェロ協奏曲は本当に胸に染みるいい曲で、今日はソリストがベテランの堤剛というのも楽しみ。
最初に、先月21日に若くして亡くなられた高円宮憲仁親王を偲んで、アイルランド民謡「ロンドンデリーの唄」が演奏される。高円宮さまは読響の名誉顧問であられたそうである。多方面で活躍されていたので各界への影響は大きいことだろう。
続いて堤さんと大植さんがステージへ。冒頭のチェロがわりとあっさり始められる。オーケストラの伴奏は繊細で丁寧である。堤さんのチェロは、必ずしも大迫力ではなく、技術的にも完璧とは言えないところもあったが、第3楽章の静かな歌は気持ちを穏やかにさせてくれる。
休憩を挟んで、大植さんの本番、「英雄の生涯」。大植さんは1995年にアメリカのミネソタ交響楽団の音楽監督になってから、脚光を浴び、私もCD等で名前を聞いていたが、演奏を聴くのは初めて。来年からは朝比奈隆亡き後の大阪フィルの常任指揮者に就任することになっていて、日本での注目度が上がるのは間違いない。読響とは、初顔合わせ。今後は大フィルに専念するとのことで、読響を振ることは当分無い模様。
最初の「英雄」のテーマ。この部分こそ、この曲の最もかっこいいところ!気分が高揚し、勇気が出てくる音楽。大植さんは、プログラムに掲載のインタビューにもある通り、「室内楽的」な演奏を志向するとのことで、決して大音量で攻めたてるようなことがない。指揮の動きがとても大きいのも印象的。全身を使って、指揮しています。読響のアンサンブルも間然とするところがない。しかし、(と敢えて言いますが)さすが大植さん!と言えるところが見えてこない。どちらかと言えば個性が出にくい曲ではありますが、「これが俺の<英雄の生涯>だ!」というものがはっきりと感じ取れなかった。まあ、初顔合わせなのでオーケストラとも手探りのところがあるのだろう。全体には、迫力よりも繊細さを志向する指揮者だなと感じました。最後の「英雄の引退と完成」のような静謐な音楽が彼に合っているように思いました。
終演後の客席からの拍手が暖かく、花束を持った女性が何人かステージに詰めかけていたのを見て少しほっとしました。指揮者としてはまだ若いし、これからの活躍に期待しよう。がんばれ、大植さん!
- 12月21日(土)武蔵野スイングホール(中央線武蔵境駅前)
ロバート・バルト リュート・リサイタル
ヴァイス(1687-1750):「ソナタ第49番」変ロ長調
同:「ソナタ第36番」ニ短調よりFantasia,
Courante, Sarabande, Bourree
ハーゲン(1720-1787):「ソナタ」ヘ長調
J.S.バッハ(1685-1750):「ソナタ」ト短調(BWV1001)よりSiciliana,
Presto
ヴァイス:「ソナタ第45番」イ長調よりOverture,
Sarabande, Presto
ハーゲン:「ソナタ」ニ長調
リュート:ロバート・バルト(Robert
Barto)
ここのところ、引越したこともあって、落ち着いて音楽を聴ける状況になかったのですが、ひさしぶりに鞄から「ぶらあぼ」を取り出してパラパラめくっていたら、「ロバート・バルト」という文字が目に入りました。ん?どっかで聞いたことある名前…、と思ってよく見ると、リュート・リサイタルとあります。おお〜、間違いない、NAXOSからヴァイスのシリーズを出しているリュート奏者である(NAXOSでは”ロバート・バート”と表記)。最近、第5集が発売され、さっそく買って寝る前のお供になっています。
このバルトさんのCD、このHPの"最近買ったCD(1997-1999)"でも書きましたが、本当に極上なんです。情感あふれるヴァイスの音楽のすばらしさを教えてくれます。そして細部のニュアンスの美しさ!バルトという人は非常に音楽性豊かな方なんだろうなと、演奏を聴きながら想いを馳せていました(ジャケットには写真も載っていないので。)その方が日本に来るとは!これは行くしかありません。
武蔵野スイングホールは初めて行きました。中央線の武蔵境駅前の便利なところにあります。例によって、当日券狙いで行ったところ「完売御礼」の文字に焦りましたが、窓口に行ったら「1枚だけあります」と言われ、幸運に感謝して会場に入る。座席数180のこじんまりとしたホール(ホールというかスタジオだな)。
ステージにはリュートが置いてあります。リュートは、ギターの前身と言えばいいのでしょうか、バロック時代にはやった楽器ですが、その後は廃れてしまい曲もあまり書かれていません。しかし、ギターよりやわらかく暖かい音色は、個人的には大好きです。
そしてバルトさん登場。長髪の風貌、年齢はやや不詳(40代?)。楽器のことはよく分かりませんが、調律が難しそう。充分時間をかけて演奏スタート。ホールは残響がもう少し欲しい気がしますが、ヴァイスの美しい旋律が響きます。ヴァイスは「サラバンド」が最高です。ゆったりとしたテンポで哀愁漂う旋律が、優しく心を包みます。それにしても、バロック音楽とは思えないほどロマンティックなメロディの数々。これぞまさに癒しの音楽です。これを聴いたら誰だって気持ちよくなるはず。お客さんもさっそく夢の世界へ行っていました(ぐぅぐぅ・・・)。ソナタの36番は名曲でしょう。CDでは第1集に入っていますが、これは何度も繰り返し聞いた記憶があります。
ヴァイスの曲を聴くと、土の臭い、太陽の温もりを感じるような気がします。音の移ろい(転調)が実に絶妙。すーっと肩の力が抜けていくような感じです。
それに比べ、ヴァイスより一世代後のハーゲンの曲は、技巧的には新しいところがあるように思いますが、情感、奥行きといった点でヴァイスには一歩及ばない気がしました。バッハのソナタは、プレストの華やかで技巧的なところがバッハらしい。
盛大な拍手に応え、再びステージに出てきたバルトさん。ちょっと悩ましい表情をされた後、「速いのと遅いのどっちがいいですか?」と客席に向かって聞いて、笑いを誘う。ロンド(作曲家はききとれませんでしたが、どっかで聴いたことある)、そしてヴァイスの「ソナタ第5番」から1曲をアンコール。
ちょっとシャイな感じのバルトさんでしたが、満席の客席には満足だったのではないでしょうか。ただ天候が悪く(雨)、気温も低く、弦の調整にはかなり苦労された様子でした。
いやぁ、あんなリュートを生で聴きながら眠りにつけたら最高ですね〜(って、眠りに就いてしまいましたが…。)。でもCDでも充分ぜいたくできます。ありがたや、ありがたや。
- 12月26日(木)東京芸術劇場 大ホール
第141回宇宿允人の世界
モーツァルト:「フルート協奏曲第2番」ニ長調 K.314
ベートーヴェン:「交響曲第9番」ニ短調 作品125
フルート:近藤ひかり
ソプラノ:青柳有香子,アルト:末芳枝,テノール:佐藤敦史,バス:山崎岩男
指揮:宇宿允人
管弦楽:フロイデ・フィルハーモニー
合唱:フロイデ・フィルハーモニー合唱団,創価大学第九合唱団
12月16日夜、NHK教育テレビのETV特集で、宇宿允人が取り上げられた。練習風景を中心にあまり脚色を加えず流していた。聞きしに勝る厳しい練習。楽員もそして本人も身体的、精神的にぼろぼろになりながら音楽を創っていく。ここまで厳しくなくてはならないのか、と宇宿自身も自問する。何だか「音楽が好き」なんて言っている自分がおこがましい気がしてきた。命をかけて音楽をやる、そして聴く。そこまでしないと音楽は語れないのかもしれない。
私はダメもとで年末の第九の公演のチケットがあるか、電話で聞いてみた。幸運なことに僅かに残っていた。座席番号は1A19。なんと最前列のド真ん中、指揮者のまん前である。
平日なので会社帰り。残念なことに夕方に打合せが入ってしまい、最初のフルート協奏曲は第2楽章の途中からしか聴けなかったが、すばらしいフルートだった。近藤さんはまだまだ若い方ですが、何と典雅な音を出されることか。音がステージからふわふわと舞い上がって行くよう。細やかな表情もよく出ています。技術的にも相当なものをお持ちですが、それを感じさせない。オーケストラとの息も絶妙で、終演後はブラボーの声が上がっていました。優れたフルーティストです。ほかの曲も聴きたいところ。
休憩を挟んで第九。舞台の照明がつくと、そこは神聖な空間に変わり、こちらもにわかに気分が高揚してきます。そして宇宿さん登場。第1楽章、じっくりと踏みしめるように進みます。中間部のクライマックスでは轟音がとどろきます。
第2楽章、冒頭の弦の切れ味の鮮やかさ!紙1枚で指先を切ってしまうような鋭さ。後半になるにつれて音楽の熱気が増していくのが分かります。弦楽器のアンサンブルのよさには息を飲むほど。指揮棒から音楽が流れ出ているような錯覚を覚えます。
第3楽章冒頭、木管が重なって出ていくところ、継ぎ目がきれいに重なって、絶妙なグラデーションを見せます。激しい音楽が得意なように見える宇宿さんですが、このような緩徐楽章のうまさは格別。流れに無理がなく、すぅっと体に入ってくる感じ。第3楽章から切れ目なしで第4楽章に入ります。チェロが語るところ、宇宿さんの指揮棒は動いているか動いていないか分からないくらい。やや朴訥ですが、奏者は自分の言葉で演奏しているように思えます。そしてバスの独唱に続いて合唱が入ります。今日は2Fのバルコニーにも乗るほどの大所帯。明瞭でよくそろっている。特に男声はよくまとまっていた。終結部は合唱、オーケストラとも絶好調。いやいや、よくやった!
今日は長いプログラムのためかアンコールはなし。いつもの宇宿さんのお話も期待していたのですが、ちょっと残念。
正直、私は第九はちょっと苦手なのです。どうもピンと来ない。でも、宇宿さんの第九を聴くのはこれが3回目でしょうか。来るたびに間違いなく集中力が高くなっているのは分かります。
宇宿さんの音楽は極めて正攻法です。変にテンポを揺すったり、小細工をしたりしません。ですので、そのまま演奏したら当たり前の平凡な演奏で終わってしまう可能性が高いのです。事実、そういう演奏もときどきあります。しかし、1つの音に込める集中力という点では他の指揮者の追従を許さないでしょう。臨時編成のオーケストラからこれだけ引き締まった音を出させるのは並大抵ではないでしょう。今日のオーケストラの足並みの揃い具合を聴けば、どれだけ厳しい練習したかが分かります。
ステージを降りた宇宿さんはいくぶん老けて見えました。オーケストラの運営等でもいろいろ苦労が絶えないようですが、少しでも多くの人に音楽のエッセンスを伝えていただきたいものです。
今年のコンサートの記録はこれにて打ち止めです。来年も音楽を聴くよろこびを感じられるように願っています。ご精読、ありがとうございました。
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