最近行ったコンサート
2003年4月
- 4月5日(土)川口リリア音楽ホール
L.v.B.室内管弦楽団第7回演奏会
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲
ワーグナー:「ジークフリートの牧歌」
ベートーヴェン:「交響曲第7番」イ長調 作品92(ベーレンライター校訂新版)
指揮:広井隆
桜は満開となったが、今日は雨が降り続き真冬のような寒さ。初めて来た川口リリアホールは京浜東北線川口駅のすぐ前。音楽ホールは、パイプオンルガンもある実に立派なホール。壁は大きな木の幹が並んでいるような造りで、森の中にいるような落ち着きと安らぎを感じる。開演前に、8人の弦楽合奏でバッハの「主よ人の望みの喜びよ」、と「さくら」が演奏される。
プログラムの最初は「フィガロの結婚」序曲。演奏はまずまずでしょうか。続く「ジークフリートの牧歌」。CDでは何回か聴いたことがありましたが、生は初めて。これは、ワーグナーが愛妻コジマの誕生日の朝に、楽員を集めて演奏させたというエピソードを持つ曲。全編にわたり、まばゆい幸福の音楽が奏でられます。ワーグナーにしては、劇的な展開がなく、一貫して静かにとうとうと流れる音楽です。ワーグナーはこのとき、本当に幸せだったのでしょう。実に素直な音楽です。この音楽のように幸せな生活を送れたら最高でしょう。こんな美しい曲の中で人生を終えられたら・・・と思います。演奏は、呼吸が深く、表情の濃淡もよく出ていて、息が合っていました。
後半はベートーヴェンの7番。演奏は、テンポが速すぎず遅すぎず、表現も自然で安心して聴ける。楽譜は最近流行のベーレーンライター校訂新版で、ホルンの鳴らし方が一部従来版と違うのが面白い(ホルンの方は熱演でした)。フルートもはっとするほどうまい。第2楽章はとてもきれいな演奏でした。終楽章も力強く、やっぱり7番はいいなと思いました。このオーケストラの特徴は、比較的少人数であるためもあってか、呼吸が良く合っていることだと思いました。指揮者と各プレーヤーとの間にすきまがなく、出したい音を全員が理解しているように思いました。ただ、欲を言えばもう少し各奏者の意欲を表に出してほしいところもありました。
と偉そうなことを書きますが、実は7番を生で聴くのは今日が初めてでした。そしてこの演奏で、ようやくベートーヴェンの交響曲全曲を生で聴いたことになります。(たぶん。第1番はどこのオーケストラで聴いたか記憶が定かでないですが。)この幸せに感謝いたします。
アンコールはシベリウスの「悲しきワルツ」。これまた美演でした。弦が気持ちいいほどきれい。このオーケストラは叙情的、情景的な音楽が得意のようです。L.v.B.とはLudwig
van Beethovenの略で、その名の通り、ベートーヴェンの交響曲を演奏することを目的としたオーケストラとのこと。あと残すは「第九」のみですが、偶数番の曲も聴いてみたかった気もします。
- 4月11日(金)NOCTYホール(東急田園都市線・JR南武線溝の口(武蔵溝ノ口)駅前)
Sfera Brass
Quintet Promenade Concert
H.Cable:「ニューファウンドランドの情景」
J.S.バッハ:「目覚めよ、と我を呼ぶ声あり」BWV645
J.S.バッハ:「小フーガ」BWV578
R.Roblee:「アメリカン・イメージ」
椎葉大翼編:「ファンタジー・ステージ」
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」(管楽五重奏+パーカッション版)
溝の口は私の利用している梶ヶ谷駅の隣の駅。駅前の丸井の上にホールがあるのはなんとなく知っていたが、「ぶらあぼ」で演奏会を発見したので行ってみた。今日は金管五重奏である。トランペット×2、ホルン、トロンボーン、チューバの5人編成。近くにある洗足学園音楽大学の学生さんらしい。ホールはやや横幅の広い中規模の多目的ホール。お客さんは結構多い。
最初のCableの曲は、カナダ北東部の情景を描いた曲。のんびりとした爽やかな曲。広大な牧場の風景を思い浮かべる。金管だけの編成は、明るく、陽気で、ちょっとユーモラスな雰囲気を創り出す。次はバッハ。トランペットにもいろいろな種類があるのだ。持ち替えて演奏している。バッハは高貴で爽やかで、やっぱりいい。小フーガは、普通はオルガンで演奏される曲だと思うが、こうして五重奏で演奏されると、曲の構造がよくわかって面白い。久しぶりにこの曲を聴いたが、本当にすばらしい曲!格調の高さにしびれてしまいました。
Robleeの曲は3楽章からなる。第1楽章は、華やかな曲調、第2楽章はちょっとJazzyなまったりした雰囲気、第3楽章はファンファーレ風。各奏者の息もぴったりで、贅沢な雰囲気を醸し出していました。金管のアンサンブルもなかなかいいですねぇ。
後半の最初はちょっと雰囲気が変わって、ディズニー映画「アラジン」をテーマにした音楽劇。ナレーション+金管五重奏+パーカッション×2。ナレーターはトランペットの石田雅也さん。これが実にうまい。声も良く、語りもうまいし、場慣れしていてかっこいいステージマンといった感じ。挿入される音楽も心地よく、素敵なショータイムとなりました。
最後は「展覧会の絵」。冒頭のトランペットはさすがにうまい。「古城」のサクソフォーンのソロの箇所がホルンになっているのは面白い。通常ならサックス奏者が喜んで出てくるところなのだが、今日はあくまでも”金管”である。一部省かれた曲もあったようだ(”卵の殻をつけた雛の踊り”など)がほぼ全部演奏された。さまざまな楽器への編曲が存在する展覧会の絵だが、金管五重奏(+パーカッション)では楽器の制約もあって、相当技巧的に難しいと思われる。今日の奏者もちょっと苦しんでいる様子でしたが、いやいやこの大曲をよくやり遂げたものです。
アンコールは、SMAPの「世界に一つだけの花」。客席の手拍子も加わります。今日が第1回の演奏会だったそうですが、変化に富んだいいプログラムでした。ぜひ第2回を期待しています。
- 4月19日(土)横浜みなとみらいホール
日本フィルハーモニー交響楽団 ミュージックポート ヨコハマ・シリーズ第186回定期演奏会
メンデルスゾーン:「交響曲第4番」イ長調 作品90<イタリア>
ラヴェル:「ピアノ協奏曲」ト長調
ラヴェル:「ラ・ヴァルス」
ピアノ:岡田博美
指揮:エルヴィン・ルカーチ
「イタリア」とラヴェルのピアノ協奏曲という、よいプログラムに惹かれてみなとみらいホールに出かける。指揮のエルヴィン・ルカーチは名前は聞いたことがあるが、演奏を聴くのは初めて。ハンガリーの指揮者。1928年生まれというから、今年75歳。しかし、彼はそんな年齢を感じさせず軽やかな足取りでステージに現れた。風貌はどこかオーマンディを思わせる。
「イタリア」は颯爽と始まる。淀みのない、密度の濃い演奏。オーケストラの音の切れもよい。特に弦はみずみずしい。第2、第3楽章の流麗な音楽はメンデルスゾーンならでは。第4楽章は速めのテンポがよい。演奏は明晰。ここでも弦が全体をリードしていく。手堅いが好演であった。ただ、曲自体、交響曲としてはちょっとスケールが小さい気がする。美しい曲であるが...。
休憩を挟んで、後半はラヴェル。「ピアノ協奏曲」は私のお気に入りの曲。生で聴くのは今日が初めて。ピアノの岡田さんは将来を嘱望される若手ピアニスト。パシッという撥の一発で曲が始まる。「何だ!?」と驚いている人もいる。岡田さんのピアノは、慌てずじっくり音をホールに響かせる。相当の難曲と思われるが、テクニック的に不安に感じさせるところがまったくない。ルカーチの伴奏も見事だ。この曲の伴奏もかなり難しいと思われるが、音の切れ、リズム感ともすばらしく、輝かしい。センスのよさを感じる。第2楽章のピアノ・ソロ。しっとりとした質感のピアノ。いいピアニストだ。それにしても何という美しい音楽なのだろう。この曲が作曲された1932年ごろ、世の中はすでにロマン派の時代は終わり、新しい音楽が誕生していた時代。時代に取り残されたような静寂の音楽である。いつもの頭脳明晰なラヴェルではなく、ノスタルジックなラヴェルがここにいる。第3楽章はまったく雰囲気が変わり、ちょっとおどけたお祭りのような音楽。ジャズの影響を受けているとは言え、これはまさにラヴェルの音楽。さまざまなパーカッションの活躍も見ていて楽しい。演奏はピアノともども呼吸がぴったり。ここでもルカーチのセンスのよさを感じる。いい演奏だった!
続いて「ラ・ヴァルス」。コントラバスの不気味な唸りから開始される。この始まり方はラヴェルとしては異色。しかし徐々にワルツの音楽が浮かび上がってくると、ラヴェルらしい華やかさが現れてくる。オーケストラは今まで以上に密度が濃い。この曲で人数が増えたこともあるが、迫力も増す。ルカーチの指揮振りもより表情が豊かになった。各奏者の表現もさらに自由度を増しているのが分かる。音楽が生き物のように暴れだす。ルカーチの真髄ここにあり!といったところだ。最後は音の波に押されてお尻が浮きそうになる錯覚を覚える。圧倒的な演奏。ブラヴォ〜!!演奏もすばらしかったが、ラヴェルの天才的な音楽には改めて脱帽。本当にラヴェルはすばらしい。
今日のプログラムは交響曲が前菜で、メインが短い「ラ・ヴァルス」という少々バランスの悪い組み方かなと思ったが、こういう仕掛けだったんですね。せっかくルカーチのすばらしさを知ったところでもうおしまいというのはちょっと残念だと思っていたところ、アンコールがありました。ブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」。ポピュラーすぎる曲ではありますが、一筋縄ではいかない、味のあるルカーチの演奏、ここでも彼の本領発揮といった感じ。前半はややクールな感じを受けましたが、彼は本当は熱血指揮者でしょう。そしてオーケストラをまとめる手腕、センスのよさは抜群。なぜハンガリーの指揮者は有能な人が多いのでしょう。プログラムに、「日本フィルが最も信頼する指揮者のひとり」と紹介しているのもうなづけます。
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