最近行ったコンサート
2003年12月
- 12月31日(水)東京文化会館大ホール
ベートーヴェンは凄い「全交響曲連続演奏会」
ベートーヴェン:「交響曲第1番」ハ長調 作品21
ベートーヴェン:「交響曲第2番」ニ長調 作品36
ベートーヴェン:「交響曲第3番」変ホ長調<英雄>作品55
ベートーヴェン:「交響曲第4番」変ロ長調 作品60
ベートーヴェン:「交響曲第5番」ハ短調<運命>作品67
ベートーヴェン:「交響曲第6番」ヘ長調<田園>作品68
ベートーヴェン:「交響曲第7番」イ長調 作品92
ベートーヴェン:「交響曲第8番」ヘ長調 作品93
ベートーヴェン:「交響曲第9番」ニ短調<合唱付>作品125
指揮:岩城宏之(1,6,9番),金聖響(2,3,8番),大友直人(4,5,7番)
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団(1,3,6,8,9番),東京交響楽団(2,4,5,7,9番)
ソプラノ:釜洞祐子,アルト:坂本朱,テノール:小林一男,バリトン:直野資
合唱:晋友会合唱団,東響コーラス,合唱指揮:関屋晋
最初、情報誌「ぶらあぼ」で、”ベートーヴェン交響曲全曲演奏会”の文字を見たとき、一瞬目を疑ったが、やはり間違いなく1日で全曲演奏してしまおうという狂人的な企画であった。友人からの誘いで行くことになった。指揮者とオケは書いてあったが、誰がどれを振るのかは当日のお楽しみだった(結果は上記のとおり)。15:30開演で、終了予定が何と24:30。各曲の間に15分の休憩、6番と7番の間に約50分の大休憩が入る。この奇特なプログラムにもかかわらず、ホールにはかなりのお客さんが入っている。さて、どこまで気力、体力が持つだろうか?
トップバッターは、ベテラン、岩城宏之。東京シティ・フィルを聴くのは今日が初めて。シティ・フィルは定期演奏会が平日にしかないので、演奏会を聴くチャンスがほとんどないのである。第1楽章はまずまずといったところであったが、第2楽章以降、岩城の棒に音が収斂していくのがよく分かった。第1番は、コンパクトで均整の取れたよい曲だと私は思います。
第2番は、金聖響。名前は知っていたが、聴くのは初めて。一見すると、クラシックの指揮者には見えない。ノリの良さそうな兄ちゃんに見える。オーケストラが東響に変わって、響きが随分変わる。シティ・フィルは”明晰”、東響は”重厚”といった感じか。金の指揮は、とても流れがよく、音楽に推進力がある。2番は、1番に比べ、複雑で演奏時間も長く、ベートーヴェンの新しいことへの挑戦意欲を強く感じる曲である。
第3番<英雄>は、金/シティ・フィル。金はベーレンライター版を用いているということもあってか、テンポが速くさっそうとした演奏。編成も小さいせいか、やや迫力に欠けた。個人的には、英雄に関しては、大編成の重厚な演奏が好きなのですが。
第4番。大友さんの指揮は、従来のオーソドックスな解釈に基づいたものと言えます。どこを聴いても、望んだ響きがします。最近は従来の解釈に飽き足らず、新しい版を使うなど新しい試みをする人が多くなり、こうした素直な演奏があまり聴けないのが残念なところです。第2楽章はテンポもよく、美しかった。4番は本当にいい曲です。
同じコンビで第5番。これも4番と同じく、安定的な演奏。この曲は個人的に、幼少時代の記憶と結びついており、客観的には聴けません(特に第2楽章)。懐かしいというか、くすぐったいというか、苦しいというか・・・様々な感情が交錯します。
第6番<田園>。岩城/シティ・フィルの演奏。一聴すると淡白ですが、音が結晶化し、花開いているという印象。岩城の意図をオーケストラが全面的に受け止めて無心に演奏しています。まさに心技体が一体となった演奏。こんなに透き通った枯れた演奏をして、岩城さんは大丈夫なのか?なんて心配をしてしまうほど。名演でした。
大休憩を挟んで、第7番は、再び大友/東響。指揮者、オーケストラともども自信に満ちた演奏。特に終楽章は、オーケストラの意欲が高潮し、圧倒的でした。
第8番は、金/シティ・フィル。この曲は編成は小さめのはずだが、第7番並の楽員がステージに乗っています。そのせいか、やや響きが重すぎた気がします。金のさっそうとした演奏が少々生かされなくて残念。それにしてもこの曲は、隠し味いっぱいで楽しめる曲です。演奏は難しそうですが。
そしてついに第9番に到達。すでに23:30ですが、思ったほど疲れていません。オーケストラは東響、シティ・フィル合同。合唱団も加わり、壮観。オーケストラもお疲れのこととは思いますが、そんな様子は見せず、冒頭から重厚で自信に満ちています。第9という曲は、決して分かりやすい曲ではないと思います。私もあまり好む曲ではありません。しかしこうして聴くと、「とにかく前へ進もう!どんな苦難でも前へ進めば幸福を勝ち取れるのだ。」という強いメッセージを感じます。混沌とした闇の中、ただひたすら、がむしゃらに前進する第1,2楽章。そしてふと立ち止まり、生きることへの感謝を噛みしめる第3楽章。そして人間のすばらしさを歌い上げる第4楽章。第3楽章に入ったところで日付が変わりましたが、音楽は静かに流れていきます。何らかのカウントダウンを期待していましたが、この偉大な曲の前ではそんなイベントはくだらないことにも思えてきます。合唱はさすがに力強く、そこらのアマチュア合唱団との格差を見せつけられました。岩城さんの指揮はさすがに手慣れていて、流れ、バランスがとてもいい。<田園>のときのような枯れた様子はなく、生気に満ちた指揮ぶり。終楽章のコーダはしびれました。
盛大な拍手の中、全曲演奏会が無事終了しました。これだけ聴いても飽きなかったのは、演奏が良かったのももちろんですが、やはりベートーヴェンが書いた曲のすばらしさでしょう。どれも個性的であり、どれもが名曲と言っていい。
この演奏会を発案した高橋泰子さん、企画した三枝成彰さん、そして3人の指揮者、2つのオーケストラ、そして時間を共有したお客さん、そして何よりベートーヴェンに感謝いたしましょう。1年の締めくくりにふさわしい、壮大な演奏会でした。
蛇足ながら、今日の演奏に順位を付けるとすれば、6番、9番、7番、4番、2番、5番、1番、3番、8番といった感じでしょうか。ただしいずれも水準が高く、駄演はありませんでした。
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