最近行ったコンサート
2004年5月
- 5月8日(土)NHKホール
NHK交響楽団第1514回定期公演
ブルックナー:「交響曲第5番」変ロ長調(原典版)
指揮:ユッカ・ペッカ・サラステ
ブルックナーが聴きたくなって、NHKホールに出かける。N響の定期に来るのは2002年10月以来1年半ぶり(前回はタルミ指揮のブルックナー8番)。当日券のC席を買う。NHKホールは周辺にいいホールができた今となっては、音響的に相当聞き劣りがするホールである。最近はどんなに安くても3階席のD,E席には座らないことにしている。日本一のオーケストラの本拠地がこのホールとは実にもったいない。
サラステさんの指揮を聴くのは初めて。名前はよく知っているが、CDでもあまり聴いた記憶がない。同じフィンランド出身のエサ・ペッカ・サロネンと間違えやすい。最近はブルックナーのCDも出しているようである。さて、5番の冒頭はわりと爽やかに開始。”シベリウス的”というのは短絡的かもしれないが、淡々と爽やかなブルックナー。木管の掛け合いはとても美しく、さすがと思ったが、ブルックナーならではの空間的広がりが感じられない。ブルックナーの音楽には宇宙的、宗教的雰囲気が多分にあると思うのだが、サラステはそういう表現を目指していないようだ。テンポを崩すこともなく、すいすいと進んでいく。明快と言えば明快だが、それ以上の深いものがない。強いえ言えば、第3楽章スケルツォの快活な音楽は彼の美質に合っていたようだ。しかし、第4楽章のコーダはまるでスーザのマーチのように聞こえた、と言ったら辛口過ぎるでしょうか。ある意味でサラステの音楽観がよく分かる演奏で、聴き終えたあとは結構すっきりした気分であったが、ブラボーが出ていたのには少々がっかりだ。N響は、サラステの意図を良く汲んでいて悪くはなかった。だが、サラステのブルックナーはもう聴かなくてもいいなぁ、と思ったしだい。ブルックナーは、やはり振れる指揮者と振れない指揮者がいるなと実感。本当に難しい。
- 5月15日(土)葉山町旧東伏見宮別邸(あけの星幼稚園内)
第12回葉山芸術祭/三浦半島の作曲家U
(1)矢野義明:「祝典行進曲」(逗子市制50周年記念作品)(2004)
(2)矢野義明:「ファンタジー・オイラート」作品91
(3)尾高惇忠:「立原道造の詩による五つの歌曲」より”夏花の歌(ト長調)”,”憩らい”,”ひとり林に”
(4)尾高惇忠:「井上震太郎の詩による二つの歌曲」
(5)矢野義明:「バラード第2番」作品110
(6)伊藤鎮哉:「金子みすゞの世界T『大漁』」”大漁”,”不思議”,”さびしいとき”,”霧”,”転校生”
(7)尾高惇忠:「ピアノのためのバラード」(1992)
(8)團伊玖磨:「ヴァイオリンとピアノのためのファンタシア第3番」(1984)
(9)伊奈律子(高崎乃理子詩):「星を感じて」、「とねりこの木」
(10)加藤由美子(高崎乃理子詩):「とねりこの木」、「おかあさんの庭」
ソプラノ:太田朋子(3,4,9,10)
ヴァイオリン:小林恵(8)
ピアノ:新美夕紀子(1,3,4,5,9,10),鈴木麻耶(2,7),萩生哲郎(1,6,8)
朗読:森川いつみ
昨年(2003年5月)に続き第2回目の開催である。三浦半島の由縁のある作曲家でコンサートを開くという面白い企画。昨年1回の企画かと思ったら、第2回目が開かれた。場所は昨年と同じ葉山の旧東伏見宮別邸。ピアノを弾く弟のため、今年も家族総出でお手伝いも兼ねて参じる。
会場に着いて車を降りた瞬間、何とも柔らかな空気が身を取り巻く。東京からそれほど離れていないのに、この三浦半島の空気は心も体も癒してくれるような香りがする。とんびの鳴き声が遠くで聞こえる中、演奏会が始まる。
(1)の行進曲はお隣の逗子市の市制50年を記念して作曲されたピアノ連弾のための出来たてほやほやの新曲。行進曲にふさわしく快活。新曲なのにどこかで聴いたことのあるような親しみやすさと、格調の高さも兼ね備えた名曲だと思いました。オーケストレーションしたらまた楽しいでしょうね。次の(2)も都会的な洗練された美しさと、古典的な格調の高さを感じます。続く尾高さんの歌曲は、ややシュールな雰囲気を醸し出します。太田さんのソプラノと新美さんのピアノは息がぴったり。そして再び矢野さんのピアノ曲(5)。さきほどの(2)よりさらに古典的な雰囲気が強いですが、堂々とした曲作りは誰のどの曲に似ているとも言えない非凡な強さを感じます。テクニック的にも相当難しそうですが、鈴木さんは見事に弾ききり、感銘を受けました。もっとポピュラーになっていい充実した作品だと思いました。
休憩を挟んで、詩の朗読とピアノという面白い曲集(6)。朗読は湘南ビーチFMのパーソナリティの森川さん。簡明な詩とピアノの世界。何だか幼稚園の先生からお話を聞いているようなちょっと懐かしい気分になりました。続く尾高さんの(7)。音楽コンクールの課題曲だったとあって、音楽的にも技巧的にもかなり難しそうな曲。團さんの(8)は、ヴァイオリンとピアノ。一聴すると、フランスのロマン派の曲のように聞こえるきれいな曲。ある意味日本人らしくないですが、いい曲はたくさん演奏されるべきと思います。最後は再び歌曲。詩を書いている高崎さんは、ソプラノの伊奈さんの同級生とのこと。太田さんの日本語はとても分かりやすく、気持ちがよく伝わってきます。「とねりこの木」は、(9)、(10)両方に入っていますが、これは同じ詩に別の曲が付いています。伊奈さんの曲のほうは、日本語の語感を自然に生かした曲風でしたが、加藤さんの曲は、どちらかと言うと、音感、リズム感を強調した雰囲気的なイメージで、面白く聞けました。最後の「おかあさんの庭」は、太田さんの優しい歌がとても印象に残りました。アンコールには矢代秋雄さんの「夢の舟」を萩生さんが弾き、幕が下りました。
音響的には決してよいと言えない会場ですが、多彩なプログラム、出演者で、飽きさせない内容でした。このような地域に根ざした活動というのは、地元の歴史、人間を知ってより愛着を高めることに大きく貢献すると思います。今日は、矢野さん、尾高さんをはじめ作曲家の方も会場にいらっしゃっていて、活動が実りあるものになっていることを印象付けました。この調子で、来年以降もずっと続けてほしい演奏会です。
- 5月30日(日)大田区民ホール アプリコ大ホール
レイディエート・フィルハーモニック・オーケストラ第7回定期演奏会
ハチャトゥリアン:バレエ音楽「ガイーヌ」より
@ゴパック,Aバラの娘たちの踊り,Bアイシャの踊り,C山岳人の踊り,D剣の舞,E子守歌,Fクルド族の若者たちの踊り,Gレスギンカ
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「火の鳥」(1910年全曲版)
指揮:小倉啓介
バレエ:小川友梨,小倉みゆき,望月一則,小倉みゆきバレエスタジオ
バレエ付きの演奏会を開いているレイディエート・フィルの演奏を聴くのはこれが3回目(1回目が1999年1月、2回目が2001年7月でした)。あまりオーケストラの印象がないのは、いつもオーケストラ・ピットに入っていて見えないからでしょうか。でも、今日はちゃんと舞台の上に乗っていました。曲はハチャトゥリャンの「ガイーヌ」とストラヴィンスキーの「火の鳥」。バレエ付きで見るのは初めてで、どんな風になるのか興味津々。
最初の「ガイーヌ」。ゴパックは、ハチャトゥリャンらしい民族臭の濃いテーマとテンションの高い音楽。以前から彼自身がウィーン・フィルを振ったCDを愛聴していますが、生で聴くのは初めてでうれしくなります。2曲目では小さい少女の一団が舞台に登場。何ともかわいいものです。誰もが知っている剣の舞は、どちらかと言えば優美さを出した振り付け。音楽の激しさに比べやや押しが弱く、少々残念。終曲のレスギンカは剣の舞以上の賑々しい曲。こちらの振り付けも激しさはありませんが、全員が舞台に登場し、華やかな印象でした。オーケストラは健闘していていて、音楽が生き生きとして爽やかな気分になる。なお、振り付けはオリジナルにこだわらず、今回用に新たに付けたものとのこと。オリジナルも見てみたい。
続いて「火の鳥」。よく聴くのは1919年版と言われる、20分ほどの組曲だが、今日は40分以上ある原曲の方。イントロダクションを経て、鳥の尾羽を付けた小川さんが登場。優雅に舞って、舞台から消えていく。しばらくはオーケストラの演奏。音楽はかなり複雑で、幻想的で優美な旋律がある一方で、振り付けと一体となっていると思われる直接的な音型もあり、踊りなしではちょっと意味が分かりかねる箇所も少なくない。(全曲版が演奏される機会が少ないのはそのためだろう。)しかし、今日は踊り付きではあるのだが、役者は火の鳥の小川さん一人のみで、しかもオーケストラだけの演奏箇所も少なくなく、どうもバレエとしての全体像がよく見えない。有名な”カスチェイたちの凶悪な踊り”も踊りなしとはちょっと寂しい。思わず自分だったらこう踊るのに!なんて想像までしてしまった。もちろん私はバレエのバの字も知らないが、この曲には少なからずインスピレーションを感じます。
火の鳥の小川さんの踊りはよかったと思いますが、さすがに一人ではシンプルすぎた印象。いつかまた見る機会があればと思います。(ベジャールあたりがよいのでしょうか?)オーケストラはとてもよかった。この覚えにくい大曲をよくやり遂げました。小倉さんの指揮は素直で情感豊か。たまにはバレエ無しの演奏会もいいかもと思ってしまいました。
それにしても、ストラヴィンスキーが組曲版を作ったのは大正解だったと思う(2種類作ったが、1919年版の方がいい)。全曲版は長くて少々冗長に感じます。組曲の方はおいしいところをうまく集めていて、名曲に大変身していると思います。
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