最近行ったコンサート
2004年10月
- 10月2日(土)みなとみらいホール大ホール
慶応義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラ第186回定期演奏会
ワーグナー:歌劇「タンホイザー」序曲
ブラームス:「ハイドンの主題による変奏曲」作品56a
ブルックナー:「交響曲第7番」ホ長調
指揮:金聖響
3回続けてブルックナーとは、自分もブルックナー好きだなと思うが、行きたいコンサートを選んだ自然の成り行きである。名門と言われるワグネル・ソサィエティー・オーケストラを聴くのは今日が初めて(ワグネルOBオケは2回聴いた)。指揮は最近人気を上げている金聖響。金さんの指揮は昨年大晦日のベートーヴェン全曲演奏会で聴いています。
最初はワーグナー。「タンホイザー」序曲はとても好きな曲です。金の指揮は思ったより素直でストレートな表現。オーケストラはさすがにうまく、ワーグナーの世界に浸ることができました。特に後半はオーケストラのうまさに加え、沸々と湧いてくるような熱気が伝わってきて、すばらしい演奏となりました。本当にいい曲です。続くブラームス。金の指揮は率直な感じ。全体に端正な演奏でしたが、もう少し遊びがあっても良かったかなとは思います。
後半はブルックナー。冒頭の主題を奏でるチェロを聴いただけでほれぼれするような美音。弦楽器、特にヴァイオリンはプロじゃないかと思うほど、巧く、音に深みがあります。世界の一流オーケストラと比肩できるといっても過言ではないでしょう。弦に限らず、オーケストラ全体がまさにブルックナーの音を出していて、安心して彼の世界に浸ることが出来ます。金の指揮はやや早め。しかし、音楽は随所に渡り生き生きとしていて、ブルックナーに良く馴染んでいる感じがしました。前半のプログラムと同じく、奇をてらったような表現は全くといっていいほどなく、端正。しかし、難を言えば、音楽に抑制がかかっていること。もっと開放して欲しい!と思うところも、どこか理性で押さえつけているようなところがあります。これはブルックナーに限らず彼の指揮全般に言えること。それは彼のスタイルだと思いますが、このブルックナーを聴いていると、もう一歩突き抜けてほしいと思ってしまいます。ブルックナーの心は十分表現されているだけに、惜しいところです。
第1,2楽章はオーケストラのすばらしさと相俟って、名演でした。終楽章は、やや練習時間が短かったとみえ、金の指揮もオーケストラもやや粗いところがあり惜しかった。ただ全体としては、とても説得力のあるブルックナーでした。アンコールは、バッハの「G線上のアリア」。少々意外でしたが、実にナチュラルで美しい演奏。無心で聴きました。金の指揮にも抑えた感じはなく、素直にのびのびと演奏していてとてもよかった。完成度で言えば、プログラム曲より高かったかも。
指揮者もオーケストラも優秀で、どちらも今後に期待してみたいと思います。
- 10月10日(日)サントリーホール 大ホール
NHK交響楽団特別演奏会
ベートーヴェン:序曲「レオノーレ」第3番 作品72b
ベートーヴェン:「交響曲第4番」変ロ長調 作品60
ベートーヴェン:「交響曲第5番」ハ短調 作品67
指揮:ウラディーミル・アシュケナージ
今年9月にN響の音楽監督にアシュケナージが就任した。前任のデュトワはN響に新たしい風を吹き込み、かなり効果があったのではないかと思う。アシュケナージはピアニストとしては古くから日本人にも人気があり、知名度はデュトワ以上だろう。今日はそのアシュケナージの就任記念演奏会である。彼の指揮者としての録音は、いくつか聴いたが、個人的には好感を持っている。正直、彼のピアノには特別惹かれることが少ないのだが、指揮のほうはピアノ以上に個性的だと思っている。彼の指揮を生で聴くのは今日が2回目。1回目は、もう十数年前、1989年頃だったか、ロイヤル・フィルの来日公演を神奈川県の秦野市文化会館というところで聴きました。プログラムは、コダーイのハーリ・ヤーノシュ、モーツァルトのピアノ協奏曲第27番、ブラームスの交響曲第1番でした。「ハーリ・ヤーノシュ」という風変わりな曲を知ったのも、ブラームスの1番の魅力に取り付かれたのもこの演奏会がきっかけでした。
さて、最初は「レオノーレ」序曲。構えた感じがなく、あっさり開始されます。強奏部でも絶叫することなく、控えめ。全体に肩の力が抜け、穏やかな雰囲気。音楽的には心がこもっていて好感が持てます。
続いて4番の交響曲。冒頭、ほの暗い序奏がゆっくりとしたテンポで奏でられます。私にとって4番の交響曲はかなり好きな部類で、特にこの序奏部が好きです。とても思索的で精神的な音楽です。遅いテンポの序奏から、ギアチェンジして速いテンポに変わります。アシュケナージの指揮はここでも決して煽ることなく、調和の取れた音楽が流れます。第2楽章は、夢の中のような穏やかな音楽。木管を中心に、柔らかな音色が響きます。この穏やかで優しい音楽がアシュケナージの音楽の持ち味だと思います。柔らかいが、決してだれることなく、瑞々しくとても素直。何て美しい音楽でしょう。第3楽章、第4楽章も奇をてらったところは全くなく、安心して聴ける音楽。近年は、古楽器的な演奏がはやりのベートーヴェンの交響曲ですが、やはりこうして聴いてみると、過去の巨匠たちの演奏方法は間違っていなかったのだと思います。アシュケナージの演奏を、「懐古的だ」「古い」と批判する人はいるかもしれませんが、新しいことがすべてよいとは限りません。少なくとも私は、ずいぶん久しぶりにベートーヴェンらしいベートーヴェンを聴いたなぁという感想を持ちました。
休憩を挟んで、第5番。こちらも変わらず、やはりオーソドックスなベートーヴェンです。彼のベートーヴェンは暖かい。楽員もその暖かさに素直に共感しているように思われました。第2楽章、彼にはやはり緩徐楽章がよく合うようです。何と懐かしく穏やかな音楽だろう。僕はこの楽章を聴くと、何故か5歳くらいの幼少の頃のことを思い出す。あの頃、この曲を聴いていたのだろうか?聴きながら、魂がタイムトリップしていくような錯覚を覚える。第3楽章から第4楽章、オーケストラが次第に熱くなるのが伝わってくる。アシュケナージの指揮を聴いていると、彼は決して上から抑えつける感じではなく、オーケストラと同じ目線で音楽を創っていくタイプに思える。恐らく彼は少年のような純粋な心の持ち主なのだろう。その純粋さに惹かれてオーケストラが付いてくるのだと思う。ややもすると技術を鼻にかけたような演奏をするN響だが、今日はとても素直でフレッシュな演奏を聴かせてくれた。これから彼がどんな演奏を聴かせてくれるか、楽しみである。1
- 10月23日(土)東京藝術大学奏楽堂
藝大定期オーケストラ第310回(藝大ドヴォルザーク・プロジェクト])
ビーチ:「交響曲」ホ短調<ゲーリック> 作品32(日本初演)
ドヴォルザーク:「交響曲第9番」ホ短調 作品95
指揮:佐藤功太郎
管弦楽:藝大フィルハーモニア(東京藝術大学管弦楽研究部)
友人に誘われ、藝大のコンサートに。藝大フィルは何度か聴いていて、その素直で熱い音楽にいつも魅了されています。また、この演奏する奏楽堂は装飾、音響ともに実にすばらしいホールで、さすが天下の藝大と思わせます。
最初はアメリカの女性作曲家エイミー・ビーチ(1867-1944)の交響曲。彼女の名前は、聞いたことはあり、昔FMでピアノ協奏曲を聴いた気がしますし、手元にはピアノ三重奏曲作品150のCD(VoxBox
CDX5029)もあります。日本初演となる交響曲は、ドヴォルザークの「新世界より」に刺激されて作曲された作品という。第1楽章は、嵐が吹きすさぶような不安な音楽で始まる。劇的で、交響曲としての形を目指した形跡は感じるが、やや外面的な印象を拭えない。第2楽章楽章以降では、民族的な旋律が現れ、少しほっとする。終楽章は第1楽章に増して劇的で金管の咆哮などはかっこいいところもある。部分を取り上げれば、技法的にも随分熟練していて充実しているが、全体としての印象は散漫で、何を言いたいのかが見えてこないもどかしさがある。まあ、これは彼女がまだ20代の頃の作品で熟していないからとも言えるが、交響曲というジャンルにはあまり向いていなかったのかもしれない(交響曲は他に書いていない?)。ただ、他の曲ももっと聴いてみたい気はする。
後半はビーチの交響曲を生んだ源の「新世界より」。聴き慣れた曲ですが、藝大フィルの演奏はとても丁寧で新鮮味があります。藝大フィルのこうした誠実さ、真摯さには敬礼したくなります。「こんな曲、目つぶってもできるぜ」といった高慢さが全くない。それは指揮者の佐藤さんにも言えること。
今日の演奏会では、事件がありました。第1楽章の途中、地震が来ました。結構な揺れで、震度3くらいはあったでしょうか。これは演奏、止まるな、と思いましたが、指揮者もオーケストラも動ぜず、乱れなく音楽が流れました。揺れが収まった後、遅れてステージ天井の反射板が揺れ始め、壁にゴーン、ゴーンと当たっていましたが、音楽は止まりません。指揮を止めない指揮者もすごいし、あくまで指揮者に従い演奏を止めるようなそぶりが全くなかった楽員の方もすばらしい。第1楽章のあとには、会場から異例の拍手が。みなさん同じ思いだったのでしょう。帰ってから、この地震が新潟県中越地震だったことを知りました。(自分の仕事にも多少影響がありました。)
ハプニングはあったものの、藝大フィルの芸術家魂を改めて感じることができ、充実した演奏会でした。
- 10月31日(日)江戸川区総合文化センター大ホール
江戸川フィルハーモニーオーケストラ 第9回子どもと親のためのコンサート
チャイコフスキー:バレエ組曲「くるみ割り人形」より
@行進曲,Aチョコレート,Bお茶,Cあし笛の踊り,Dトレパーク,Eキャンディボンボン,F花のワルツ,G王子とこんぺい糖の精の踊り,Hグランドフィナーレ
ビゼー:「カルメン」組曲より<闘牛士>
馬場祥弘:「森のくまさん」
筒美京平:「サザエさん」
槇原敬之:「世界に一つだけの花」
指揮:喜多原和人
お話:河野智香
バレエ:佐藤崇有貴
平塚由紀子バレエスタジオ
合唱:江戸川区少年少女合唱団
友人N氏の所属するオーケストラ。これで何回目だろうか。子どもと親のためのコンサートは確か去年も来た。今日も子どもたちでいっぱい。幼稚園に紛れ込んだような賑やかさ。オーケストラ、バレエ、歌と短いながらも盛りだくさんのプログラム。去年は1日2回公演だったのが、両方とも満席だったため、今年は何と1日3回公演になったという。いやいや、お疲れさまである。私が来たのは11時からの第1回目である。
前もバレエ付きはあったが、今日はオーケストラがピットに入るという気の入れよう。バレエ団はいままでより随分人数が増えた印象。主催するお二人はもちろんうまいが、小さい子の踊りも見ていてほほえましい。クライマックスは花のワルツ。演出もだいぶ入念にされたようで、見ごたえがありました。少々注文をするとすれば、曲数は花のワルツまでの7曲で充分だったかも。子どもには少し長すぎたかもしれない。
後半は「カルメン」のあと、「みんなでうたおう」のコーナー。合唱団も登場し、誰もが知っている歌をみんなで歌います。アンコールは「となりのトトロ」より「さんぽ」。これ、私も好きな歌です。江戸フィルは、元気な雰囲気が自然に出てくるところがいいところです。バレエともよく合っていました。
前にも書きましたが、こういうコンサートは本当に大事ですね。未就学児大歓迎のクラシックコンサートなんてめったにありませんからね。私も将来子どもを持ったら、この演奏会に連れてきます。それまで(いつ?)続いていることを期待しています。
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