最近行ったコンサート
2004年12月
- 12月11日(土)東京芸術劇場大ホール
オーケストラ HA'MON 第12回定期演奏会
ベートーヴェン:「交響曲第7番」イ長調 作品92
ブルックナー:「交響曲第9番」ニ短調
指揮:長田雅人
このオーケストラのコンサートは今年の7月に続いて2回目。前回はオーケストラのうまさにびっくりした印象があります。今回は前回にも増して魅力的なプログラム。
最初のベートーヴェン。やや速めのテンポ。オーケストラはやはりうまい。長田さんの指揮は、淀みがなくよく流れます。オーソドックスと言えばそうですが、音楽に嘘がなく非常に真摯なところは大変好感が持てます。終楽章はオーケストラもじわじわと高揚し、いやがうえにも興奮させられます。ベートーヴェンを聴いた!という充実感に浸りました。
次は期待のブルックナー。冒頭の弦のトレモロから、オーケストラの集中度の高さが伝わってきます。金管の堂々とした吹きっぷりはブルックナーにふさわしいもの。木管の枯れた味わいもブルックナーそのもの。見事な頂点を築いたあとの、弦主体による第二主題。この曲は、ブルックナーの交響曲の中でも7番と並んで弦楽器が重要な役割を果たしていると思いますが、このオーケストラは弦がよく揃っていて美しく、ブルックナーを堪能できます。いや、どこのパートが、という次元ではなく、オーケストラ全体が完全にブルックナーの音になっています。アマ・オケでブルックナーは何度も聴いていますが、あの息の長いフレーズをうまくまとめるため、指揮者が速めのテンポを取ることが多いように感じます。その結果、ややせかせかした演奏になってしまうことが多いのですが、長田さんの指揮は実に落ち着いたもの。全休止もきちんととり、音楽の緊迫感が一層増しています。
私はブルックナーの交響曲の最高傑作はやはりこの9番だと思います。自分にとっては、これほど”理解を必要としない”曲は珍しいのです。アタマで考えることなく、ストレートに体に入ってくる曲なのです。曲を聴いていると自然に体が動いてしまうほど。宇宙遊泳をしたらこんな気分なのでしょうか。とにかく、雄大で開放された快感に浸るのです。
今日の演奏はまさにその快感に浸らせてくれます。第2楽章はかなり思い切りよくオーケストラが鳴る。同じようなリズムを繰り返す音楽だが、楽譜をなぞるだけの演奏とは全く違う。音が一つ一つ生きている。オーケストラの団員の方々の意識、集中度の高さには頭が下がる思いだ。第3楽章の冒頭も実に落ち着いたものだ。後半の”神の降臨”(?)の部分では、極上の弦を聴かせてくれました。何と尊い響きだろう。そしてコーダでは、ぐっとテンポを落とし、神がゆっくりと天に昇っていくような神々しい音楽に。最後の部分をここまでゆっくりと堪能させてくれる演奏は少なく、すっかり満たされました。最後のホルンの音が消えた後も、しばらく指揮棒が下りず、会場もしばし静寂に包まれました。この静寂も音楽の一部です。静寂は、オーケストラだけでなく、会場の皆さんの協力もないと決して作れないもの。今日はよい聴衆にも恵まれました。
これだけ格調の高いブルックナーはそうあるものではありません。確かに細かいミスはありましたが、それはどうでもよいことです。それより、これだけ静謐で高貴な雰囲気に包まれた音楽を創り上げた指揮者とオーケストラに感謝したいと思います。
それにしても長田雅人という指揮者はすごい方です。彼のショスタコーヴィチにはいつも感心しますが、ブルックナーでもこれだけの音楽を創るとは。彼の振るブルックナーをもっと聴いてみたいです。
- 12月25日(土)東京文化会館大ホール
都響スペシャル「第九」
ショスタコーヴィチ:映画音楽「ハムレット」(ハイライト)作品116
(序奏−宮廷の音楽−舞踏会−軍楽−宮廷舞踏会−笛吹き−決闘とハムレットの死)
ベートーヴェン:「交響曲第9番」ニ短調<合唱付> 作品125
指揮:ギュンター・ノイホルト
ソプラノ:澤畑恵美
メゾ・ソプラノ:竹本節子
テノール:チョン・イグン
バリトン:直野資
合唱:二期会合唱団
12月になるとどこもかしこも第九ばかりになり、毎年、1回ぐらいは聴かねばという気になるが、今年はどちらかと言えば積極的に第九を聴きたい気分であった。さて、どこの第九を聴くか。オーケストラで選ぶか、指揮者で選ぶか、第九以外の演奏曲目で選ぶか。そこで選んだのが都響。第九とショスタコーヴィチという珍しい組み合わせと、ノイホルトという指揮者に惹かれた。ノイホルトは、NAXOSのブルックナー4番や、ワーグナーのニーベルングの指輪全曲の廉価版CDで耳にしたことはあり、職人的な名指揮者かなという印象があった。
ショスタコーヴィチのハムレットは、最近、NAXOSよりヤブロンスキー指揮ロシア・フィルの全曲版CDが出た。今日はその中から7曲を抜粋したもの。演奏は切れ味がよく、オーケストラも気合が入っていた。ただ、音楽自体のことを言えば、不気味な雰囲気の曲が多く(ホラー映画的?)、なぜこの選曲?と思わずにはいられません。ショスタコ好きの私にはうれしいですが、一般のお客さんには受けが悪いはず。実際、演奏が終わってもしばらく拍手が出ませんでした。あっけに取られていたという雰囲気。
さて、気を取り直して第九です。速めのテンポでわりとそっけなく始まります。全体にインテンポで虚飾を排した端正な演奏というべきでしょうか。最近流行の古楽器的な奏法を目指しているわけでもないようです。ただし、ちょっとそっけなさすぎる気も。このスタイルが終始一貫しているので、納得はできるが共感はできないといったところでしょうか。ただ、終楽章の二期会合唱団の合唱は見事であった。男声も女声も明晰で力強く圧倒されました。ソリストも特にソプラノの澤畑さんが光っていました。速いテンポがここでは功を奏して、迫力のある演奏となりました。
ノイホルトさんの指揮はちょっと期待はずれでしたが、二期会の活躍で何とか救われた感じの第九演奏会でした。
- 12月25日(土)ティアラ江東 大ホール
早稲田大学フィルハーモニー管絃楽団 第51回定期公演
モーツァルト:「フルートとハープのための協奏曲」ハ長調 K.299
ブルックナー:「交響曲第8番」ハ短調 第2稿ノヴァーク版
フルート:知沢由維
ハープ:井上栄利加
指揮:松岡究
第九を聴いたあとに、モーツァルトとブルックナーを聴くなんて、聞いただけで疲れそうだが、好きなものはたくさん聴いても平気なものである。(昨年は大晦日にベートーヴェンの交響曲全曲を聴きましたし。)早稲田フィルは、よく考えると今年3月に聴いています。しかもモーツァルトは同じ曲、そしてブルックナーの7番を演奏したのでした。ただし、協奏曲のソリストは二人とも違います。
フルートの知沢さん、実にすがすがしく心地よい音色。特に有名な第2楽章の主題、ただでさえ美しい旋律ですが、その中に微妙な表情を付けて非常にニュアンス深く歌われているところなど、感服しました。完全に音楽と一体となっています。その吹きぶりから、きっと誠実で素直な感性をお持ちの方に違いないと思います。オーケストラも実に美しかった。それにしても何と典雅な曲なんでしょう。天国的な至福感。
さて、ブルックナー。第1楽章冒頭、オーケストラのうまさに改めて驚きます。呼吸の深さも充分、とうとうとブルックナーの音楽が流れます。これは非常な名演ではと期待が高まります。第2楽章、金管の若干の混濁感と、ティンパニの弱さが気になったものの、音楽に前進性があり、迫力のある演奏に。第3楽章、前半の演奏で感じられた輝きに後退が感じられます。弦楽器、特にヴァイオリンは相変わらずよく揃って美しいのですが、前進性、協調性がやや後退しています。トランペット、トロンボーンはよいが、ホルンが弱い。もっと堂々と吹いて欲しいが、なぜか控えめ。これは指揮者の指示ということでもなさそうである。ティンパニももっと気合を入れて叩いてもいいだろう。結局、最後まで最初の緊迫感は保てず終了。いや、それでも平凡な演奏に比べればかなりの水準であることは間違いないのですが、最初があまりにすばらしかっただけにとても惜しい演奏でした。
各パートはよく練習されたいたのだと思います。基本的にどのパートもとてもレベルは高かった。それを松岡さんのすばらしい感性で縫い合わせることができたのが、第1楽章に結実していました。みんな一つの音楽に向かって一直線に進んでいました。恐らく、後半、それが少しずつずれていったように感じたのは、単に練習時間が足りなかったからなのではないかと思います。あの第1楽章ができるのなら、残りもきっと同じ色で染められたはず。なんて、偉そうに言う資格は全くないのですが・・・。がんばって演奏していただいたことに感謝せねば。でも、やはり期待してしまいます。早稲田フィルはすばらしいオーケストラには間違いないはず。乞うご期待!
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