最近行ったコンサート
2005年10月
- 10月22日(土)ミューザ川崎 シンフォニーホール
フジ子・ヘミング&スウェーデン室内管弦楽団
モーツァルト:歌劇「ドン・ジョバンニ」序曲
ベートーヴェン:「ピアノ協奏曲第5番」変ホ長調 作品73<皇帝>
リスト:「パガニーニの主題による大練習曲」第6番<主題と変奏>
ショパン:「エチュード第1番」 変イ長調 作品25−1<エオリアン・ハープ>
リスト:「パガニーニの主題による大練習曲」第3番<ラ・カンパネラ>
ベートーヴェン:「交響曲第7番」イ長調 作品92
ピアノ:イングリッド・フジ子・ヘミング
指揮:トーマス・ダウスガード
フジ子・ヘミングは1999年にNHKで放送された「フジコ〜あるピアニストの軌跡〜」で一躍注目を浴びたピアニストである。それ以来、次々とCDが発売され、その波乱万丈な人生がたびたびテレビで取り上げられ、いまや超人気ピアニストの一人となった。私もNHKのドキュメントで彼女の存在を知り、こんな人がいるんだととても興味を覚えた。CDは図書館やレンタル屋で借りたり、CD屋で試聴したりして結構聴いてきたつもりであるが、生の演奏は聴いていなかった。コンサートの回数は近年多く、コンサート情報誌でも名前をよく見かける。ただし最近は音楽プロダクションの傘下に入ったためか海外のオーケストラとの共演が多く、料金もかなり高めであまり食指が動かなかった。
ミューザ川崎は、本格的なコンサートホールとしては家から最も近いところにあるホールだが、いままで行く機会を得ず、フジ子さんが来ると知り、行ってみようという気になった。ただしいつものように当日券狙い。人気ピアニストゆえ、ダメもとで行ってみたが、まだ数十席残っており、買えました。一番安い6000円の席。(10000円以上の席しかなかったら買うつもりはなかったのでラッキーでした。)席は3階のステージ左側後方。垂直方向に結構高いうえ、椅子の前の手すりが邪魔してステージがかなり見づらい。視覚的には難あり。
さて、最初はオケのみの演奏。スウェーデン室内管は初めて聴きます。室内楽なので小編成。指揮のダウスガードさんは名前はどこかで聞いたことがあるが、こちらも初めて。「ドン・ジョバンニ」序曲は、あまり親しみがなかったが、なかなか劇的で陰影のある名曲だと思いました。オケも指揮も颯爽としていて好感が持てます。
続いて、いよいよフジ子さんがステージに登場すると大きな拍手が。着物を何枚も重ね着したようなとても個性的な衣装で登場。皇帝の最初のカデンツァが終わり、オケに受け渡すところで非常にユニークなテンポをとってドキッとしたが、オケはぴったり入ったので計算済みだったのだろう。その後は特に奇をてらうところなく、オーソドックといえばオーソドックスなピアノ。ややまったりとした感じのあるピアノに対して、オーケストラはとても颯爽として若々しく、全体をうまく引き締めていたと思います。これだけやる気のある伴奏はなかなかありません。ダウスガードさんの手腕をひしひしと感じます。フジ子さんの個性がよく出たのは第2楽章でしょう。高音の澄み切った柔らかい音色は彼女ならでは。第3楽章はピアノにも一層力が入り、オケの好サポートでいい演奏となりました。フジ子さんのピアノのよさは、決してウソがないこと。表面的な着飾ったような音はなく、どの音も内面から出ていることがとてもいい。
皇帝の後、プログラムには書いていないが、フジ子さんのソロで3曲。(これは予定通りでしょう。)お得意のリスト、もう弾き始めた瞬間からフジ子さんの世界に変わります。冴えるテクニック、ほのかに漂う気品。ため息が出ます。続くショパン、この曲は私が好きな曲のひとつ。これほど情景を感じさせる曲もありません。やわらかい日が注ぐ中、川面を風が渡り、その向こうで子供が遊んでいる、そんな情景を思い浮かべます。しばらくホールにいることも忘れ、違う世界に思いを馳せます。「ラ・カンパネラ」、宝石箱を見るような可憐で幻想的な音楽です。フジ子さんの代名詞と言ってもいいほどの曲、期待通りの、いやそれ以上の演奏。そのきらきら光る変幻自在な表現は、言葉で表現しようがなく、もう「聴いてください」というしかありません。やはり、フジ子さんのソロは最高です。
その余韻を残しながら、休憩後はオーケストラの演奏。ベートーヴェンの7番。最近の古楽器演奏のスタイルを基本に、早めの小気味良いテンポで曲を進めます。元気もあり、とても好感が持てますが、やや内面が薄くなる傾向があるのが少々残念。今後の円熟に期待する、といったところでしょうか。アンコールは、まずシベリウスの「悲しいワルツ」。途中でテンポを大きく変えるのが面白く、個性的な演奏でした。次はアルヴェーンのバレエ=パントマイム《山の王》Op.37より羊飼いの娘の踊り。最初のノリのいい音楽と中間部の牧歌的な音楽の対比が印象に残ります。これで終わりと思いましたが、最後にブラームスのハンガリー舞曲第5番。曲が始まるや否や、客席から拍手が・・・。指揮者もちょっと予想外だったようですが、すぐに拍手の指揮もするようになりました。日本のお客さんっていつからこんなにノリが良くなったのでしょう。今日は、ベートーヴェンの7番で楽章の間に拍手が入り、ふだんコンサートを聴かない方が多いのかな(フジ子さん目当てか)と思いましたが、これはこれで良いことかも知れません。(それとも拍手好きの人が多かった??)
最後まで拍手が止まず、指揮者がコンサートミストレスと腕を組んで袖に下がりました。(ほかの団員も腕を組んで帰ったのはなかなかこだわりの演出でした。)オーケストラの皆さんも大変です。でも、今日のお客さんはみんな満足して帰ったに違いありません。こんな努力の積み重ねがクラシックファンを増やすきっかけになるのではと思います。久しぶりにオーケストラを聴く喜びを感じることができたコンサートでした。
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