最近行ったコンサート
1999年1月
- 1999年1月10日(日)武蔵野市民文化会館小ホール
フィリップ・カッサール(p) ピアノ・リサイタル
ドビュッシーピアノ曲全曲
ドビュッシーのピアノ曲全曲を1日で全部弾いてしまおうという大胆な企画に惹かれて足を運んだ。プログラムは全体を4部に分け、午前11時に開演、終演はなんと午後10時であった。
当日は少々遅刻してしまった(聴けなかった分はちゃんと帰ってからCDで補充しました(^_^;))が、すぐにカッサールさんのドビュッシーの世界に引き込まれた。演奏時間は実質約5時間半にも及んだことになるが、彼のすばらしいテクニックは最後までまったく衰えず、緊張を保ったまま前奏曲集第2巻の花火を弾き終えた。全曲弾くことが主たる目的で、内容はまあそこそこかと鷹をくくっていたが、それは間違いだった。彼は並のピアニストではない。鉄人である。
ドビュッシーのピアノ曲はこれまで全曲ではないにしろ、ひととおり聴いたことはあるが、正直言って私にとってはちょっと難解な音楽であった。今回全曲を通して聴いてみて、理解とは言えないまでも、聴き方の壷を得たような気がした。
ドビュッシーの音楽が革新的だったところを一言でいえば、その"非1人称性"にあるのではないかと思う。ベートーヴェン、ブラームス、そしてモーツァルトの音楽からは、作曲者の心情というか、声が聞こえる。しかし、ドビュッシーの音楽からは彼の意志や感情はあまり聞こえてこないような気がする。ベートーヴェンの音楽を聴いて、ベートーヴェンがどういう人間だったかをある程度想像することはできるが、ドビュッシーの音楽からドビュッシーの人となりを知るのは少々難しいように思う。しかし、まさにその点こそがドビュッシーの意図した音楽であったのではないか。個人の意志や感情とは切り離された音楽、それがドビュッシーの音楽だと思う。
とはいうものの、私にとってドビュッシーはまだすこし遠い存在である。
- 1月17日(日)所沢市民文化センター<ミューズ>マーキーホール
所沢市バレエ協会第2回公演
ドリーブ「コッペリア」全曲
(演出・振付:安達哲治/演奏:小倉啓介指揮レイディエート・フィルハーモニー管弦楽団)
友人N氏の友達がオケの方に出演しているということで見に行った。バレエを見るのは実はこれが初めてで、オケの前奏が終わって、幕が開いたときは非常に新鮮に感じた。美しい衣装と華麗な踊りを見て、「ほほう、これがバレエか」と思った。お話の内容は単純であり、いきなり見ても十分楽しめた。お芝居を見ること自体、考えてみると小学校の学芸会以来で、こういう世界があることを今更ながら知ったような気がした。
それにしてもバレエにおける"女尊男卑"は歴然たるものがあった。男性ダンサーはつねに脇役で、なかなか報われないなと思う。
- 1月23日(土)大田区民センター
東京ガルテンシュタット管弦楽団第36回定期演奏会
ピアノ:和田明香
指揮:末永隆一
モーツァルト 歌劇「ドン・ジョバンニ」序曲K.527
メンデルスゾーン「交響曲第4番」イ長調Op.90"イタリア"
ショパン「ピアノ協奏曲第1番」ホ短調Op.11
こんなコンサート(と言っては失礼だが)に行ったのも、東工大オケの末永氏が指揮をしているからである。しかし何のことはない、このオケは東工大オケのOBオケであったのだった。
会場は蒲田駅から歩いて10分ほどの閑静なところにある、かなり古い区民センターで、最初は「ここにホールなんかあるのか?」と心配したが、2階に上がると、ちゃんとありました。なんだか懐かしい感じのする建物でした。でもそろそろ寿命でしょうかね。
最初はがらがらだったホールも最後は100人以上入っていたかな。(それでもかなり少ないですが)ステージに現れた楽員は全部で30人ほど。室内オケと言っていいでしょうか。ほとんどの方が40代、50代で、みなさん大企業の部長さんクラスなのではないでしょうか。いやぁ、いいですなぁ。共通の趣味を持つ仲間がいるということは。みなさんこうして毎年1、2回演奏会のために顔を合わせるのでしょう。メンデルスゾーンのちょっと湿っぽい音楽を聴きながら何だかしみじみしてしまいました。
ショパンを弾いた和田さんはまだ若い人ですが、テクニックは万全で、完璧な演奏だったと思います。それにしてもショパンのピアノ協奏曲はいいなぁ。私はショパンの作品の中でピアノ協奏曲(第1番も2番も)が最高だと思うのですが。"強い意志と果てしないあこがれ"
、一言でいえばこうでしょうか。
今日の末永氏はオケにおまかせの感じでいつものスローテンポはあまりありませんでした。よかったのかも。やっぱりイタリアは速い方がいいですから。そして今日分かったことは、メンデルスゾーンあたりはこのような小編成の方が合っているのではないかということ。大編成だと、彼の音楽の素朴な感じが出ないような気がします。
- 1月24日(日)すみだトリフォニーホール大ホール
NTTフィルハーモニー管弦楽団第5回定期演奏会
指揮:松岡究
ショスタコーヴィチ「交響曲第9番」変ホ長調Op.70
ドヴォルザーク「交響曲第9番」ホ短調Op.95"新世界から"
今回の目的の半分はまだ行ったことのない、すみだトリフォニーホールに行くこと。入った瞬間の印象は「でかい!」。横のバルコニー席が前方に階段状に下がっていっているのが特徴で、スケールの大きさを感じさせるホールでした。
企業のオケというのは初めてだが、おそらく仕事よりも音楽が好き!という人たちばかりなのだろう。とてもさわやかな印象であった。ショスタコの9番は25分程度の彼にしては短い曲だが、アイロニーというかひねくりが随所にちりばめられていて、ショスタコ以外の誰でもないという印象であった。頭でっかちというか、単純に耳を楽しませてくれるところが全然ない。(ショスタコの曲はほとんどそうだが。)一見、気楽そうで、聴いてみると疲れる曲である。
新世界の方はあまり印象に残らなかったが、指揮の松岡氏はなかなかのテクニシャンであると見受けられた。音のバランス感覚がいいですな。オケはうまいひとあり、そうでないひとありの玉石混淆という感は拭えなかったが。
- 1月31日(日)新宿文化センター大ホール
O.F.C(オルフ祝祭合唱団)
ラヴェル「ダフニスとクロエ」全曲舞台上演
(演出・振付:佐多達枝/演奏:斉藤栄一指揮水星交響楽団,O.F.C.)
私の愛聴曲である「ダフニスとクロエ」を舞台上演するというので楽しみに行ってみた。昨年あたりは全曲演奏がいくつかのオケであり、人気上昇中のようだが、舞台上演はきわめて珍しい。
舞台はきわめてシンプルである。モノはダンサーが持つ花束以外いっさいなく、人間と幕と照明だけで構成されている。
本日の舞台を見た感想を一言でいうならば、「???」という感じ。前に書いたように私はバレエ、オペラに関してはまったくの初心者である。それは重々承知の上で、率直な感想を言わせていただく。シンプルなのはよいとしても、あれだけ人間がいても、こちらに迫ってくるようなパワーが感じられなかった。動きは細かいが、それが大きいものを表現していない。完全に音楽に負けていた。音楽が伝えるものの2、3割しか表現していないような感じであった。最後の最後の「全員の踊り」でようやくスケール感が出てきたが、それではもう遅い。
そして、舞台上演が少ない理由の一つは、ラヴェルの音楽があまりにも完璧すぎるからではないかと思った。本当にすばらしい曲である。繊細で美しい。冒頭の序奏を聴いただけで、うっそうとした森の中をすーっと通りすぎていく妖精たちと、木々の発散する空気の芳香が伝わってくる。これだけ精緻な音楽に何かを加えるのはかなり困難な作業ではないか。オリジナルの振付がどんなものだったかは全く知らないが、このバレエは音楽としては成功だが、バレエとしてはちょっとバランスが悪かったのではないかと想像する。初演は1912年6月8日、パリのシャトレ座でフォーキンの振り付け、モントゥーの指揮で行われた。初演は不評だった。
だが、ここであまり断定的なことを言うのは控えよう。私ももっと勉強しなければ。
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